研究課題/領域番号 |
16K19200
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研究機関 | 愛媛県立医療技術大学 |
研究代表者 |
徳原 康哲 愛媛県立医療技術大学, 保健科学部, 講師(移行) (60746329)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | アルカプトン尿 / ホモゲンチジン酸 / ベンゾキノン酢酸 / 分光法 |
研究実績の概要 |
アルカプトン尿症は、遺伝性のアミノ酸代謝異常症である。主な臨床像には尿の暗褐色化、眼球結膜や耳介などへの褐色色素沈着、肩関節、膝関節、股関節などの大関節に発症する関節炎がある。病因は、ホモゲンチジン酸オキシダーゼの遺伝的欠損にあり、ホモゲンチジン酸(HGA)が尿中に大量に排泄される。尿は、HGA が酸化しベンゾキノン酢酸(BQA)が生成されることにより、色調が暗褐色へと変化する。また、アルカプトン尿にアルカリ溶液を加えると、HGA のBQAへの酸化が促進され、急速な暗褐色化が起こることが広く知られている。アルカプトン尿症については、確定診断につながるスクリーニング検査が確立されていないのが現状であり、眼球結膜や耳介への色素沈着や関節炎の手術の際に見つかる等、症状が進行してからの発見が大半である。また、先天性代謝疾患発見のためにおこなわれる新生児マススクリーニング検査において、アルカプトン尿症はその対象となっていない。 本研究では、尿の暗褐色化を誘導した際、分光法により観察されるアルカプトン尿特有のピーク(406、430 nm)を利用した新規スクリーニング検査法の開発を目的とする。 平成28年度には、アルカリ溶液添加時のHGAの質量分析をおこない、HGAの酸化反応の観察をおこなった。その結果、アルカリ溶液添加によるHGAからBQAへの酸化の反応過程についての詳細なデータを取得することができた。また、この酸化反応は酸化剤添加により促進されることも判明した。ピークが出現する至適pHについては、アルカリ性条件下において特有のピークを観察しやすい結果となった。また、平成29年度に実施予定であった共存物質が測定系へ与える影響の解析を開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究計画にある①「ピーク検出のための至適pH の調整」、②「ゲンチジン酸及び他の褐色色素とHGA との判別法の確立」、③「 GC/MS によるHGA,BQA」については、ほぼ順調に進展しているが、②については、アスピリン服用後の尿中へのゲンチジン酸の排出が低濃度であったため、他の方法で解析を進めている。③については、GC/MSを用いて実験を行う予定であったが、NMRおよびTOFMSを用いて物質の構造変化及び質量分析を詳細に観察する方法に変更し、実施した。また、平成29年度の研究計画である④「尿中の共存物質が測定系へ与える影響の確認」についての解析をすでに開始しており、新たな知見も得ている状況である。 以上のように、実験計画が多少前後しているものの、全体的にはおおむね順調に推移しているものと考える。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年は、引き続き尿中の共存物質が測定系へ与える影響の確認を行い、その後、分光法によるHGA 定量化の検討を行う予定である。また、新たに発見したアルカリ溶液と酸化剤の組み合わせによる急速な色調変化のについては、その有用性を検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
ほぼ順調に物品購入費として使用している。
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次年度使用額の使用計画 |
計画に従い研究を遂行する。
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