骨髄増殖性腫瘍と呼ばれる疾患群のうち,一部の疾患では二次性の骨髄線維症へ移行することが知られている。移行後の全生存期間は約3年で,予後は極めて不良であることから,線維症の予後因子を把握し,いち早く治療へ結びつけることが重要である。本研究では,細胞を変異の有無に基づき1細胞ごとに分離できる技術を開発する計画であったが,当該技術の確立が困難であると判断した。そこで,骨髄増殖性腫瘍で高頻度に見出される遺伝子変異を網羅的に解析できる技術の開発,および,開発した技術をもって骨髄線維症における遺伝子変異のスペクトラムを明らかにし,予後との関わりを明らかにすることとした。 平成30年度では,昨年度において確立した網羅的遺伝子変異解析技術を用いて,100例を超える骨髄線維症患者を対象とした遺伝子変異解析を行い,骨髄線維症の予後予測スコアリングによるリスク度と,見出された遺伝子変異との関連性を機械学習的アプローチにより解析した。その結果,リスク度の高さに相関して見出される遺伝子変異を同定できた。一方で,既往の報告では予後不良因子であるとされる遺伝子変異が,骨髄増殖性腫瘍のドライバー変異の有無,種類によらず,高頻度に見出されることが明らかとなった。今後,こういった症例の予後を注意深くフォローすることによって,見出された遺伝子変異が,予後不良因子であるか確定させる必要がある。
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