研究課題/領域番号 |
16K19207
|
研究機関 | 関西医療大学 |
研究代表者 |
荒川 裕也 関西医療大学, 保健医療学部, 助教 (30733175)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | IL-15 / 橋本病 / 一塩基多型 / 自己免疫性甲状腺疾患 / バセドウ病 / DNAメチル化 |
研究実績の概要 |
自己免疫疾患(AITD)は、橋本病(HD)とバセドウ病(GD)があり、それらの病態は多岐に渡る。我々は、病態に差が出る原因として、先天的要因である一塩基多型(SNP)と後天的要因であるDNAのメチル化が関わっていると考えた。 我々は、これまでにDNAメチル化酵素(DNMT1)の機能的SNPがバセドウ病の病態に関与することを報告しているが、特定の遺伝子のメチル化と病態との関連は不明である。そこで、我々はAITDの病態と特定のDNAメチル化との関連を探索することとした。 これまでの研究より、Th17細胞の分化に関わるTGFB遺伝子とIL1B遺伝子は、バセドウ病の病態に関連があり、DNAメチル化とも関連している可能性がある。しかし、同様にTh17細胞の分化に関わるIL15遺伝子は、AITDとの関連は不明である。そこで、IL15遺伝子を候補遺伝子とするために、まずIL15 SNPとAITDとの関連を調査し、AITDとの関連を明らかにすることを目的とした。 HD127名 (重症群55名、軽症群48名)、GD130名 (難治群52名、寛解群43名)、健常人79名を対象とし、機能的SNPである+96522 A/T SNP及び+82889 A/G SNPをタイピングした。また、健常人15名、HD重症群13名、HD軽症群12名を対象とし、血清中IL-15濃度の定量を行い、健常人19名を対照にし、mRNA定量を行った。また、健常人8名の末梢血単核球を用いて、rIL-15の機能解析を行った。 本研究により、IL15遺伝子の高産性型(+96522 AA型)が橋本病重症群に多く、また、rIL-15は、Th17細胞分画を増加させることが分かった。 これらの結果より、IL-15は橋本病の病態に関連していることが分かった。これより、IL15遺伝子のDNAメチル化は橋本病の病態に関連している可能性がある。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究は、職場である関西医療大学と共同研究先である大阪大学の2施設を拠点として行っているが、初年度に行う予定であったメチル化率の測定は大阪大学でのみ行うことができる。初年度は、予想していた勤務におけるエフォートが大きかったため、大阪大学に行く機会が少なく、メチル化率測定が遅れてしまっている。検体収集と前処理は続けているため、今年度にまとめてメチル化測定を行う予定をしている。 SNP研究は、関西医療大学においても行えるため、初年度は、候補遺伝子を増やすためにIL15遺伝子とAITDとの関連を調べた。
|
今後の研究の推進方策 |
GD患者ならびに健常群の末梢血中CD4+細胞中のDNAにおいて、FOXP3、TGFB、IL1B遺伝子のCpGアイランドにおけるDNAメチル化率を測定する。FOXP3遺伝子の標的CpGアイランドは、プロモーター領域及び、イントロン3領域の2箇所である。イントロン3領域は、TSDRと呼ばれ、FoxP3+T細胞分画中のTreg細胞でのみ低メチル化状態を示す領域である。また、TGFB及びIL1B遺伝子の標的CpGアイランドはプロモーター領域であり、mRNAの産生量に関連している領域である。メチル化率は、パイロシーケンス法によって解析する。パイロシークエンサーは共同研究先である大阪大学予防診断学研究室が所持しており、使用することが可能である。パイロシークエンスを行うまでの検体処理を関西医療大学で行い、パイロシーケンサで測定する手順のみを大阪大学で行う。
|
次年度使用額が生じた理由 |
メチル化測定が予想より進行できなかったため、メチル化率測定用試薬(バイサルファイト試薬、パイロシークエンス試薬)の購入が予定よりも少なくなってしまったため。また、当初購入予定であったサーマルサイクラーを購入していないため。
|
次年度使用額の使用計画 |
パイロシークエンス試薬及び、FOXP3遺伝子、IL1B遺伝子、TGFB遺伝子、IL15遺伝子におけるメチル化測定用のプライマー及びパイロシークエンス試薬の購入。 また、国際学会(アメリカ臨床化学会)への旅費等。
|