研究課題/領域番号 |
16K19208
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研究機関 | 国立感染症研究所 |
研究代表者 |
松井 真理 国立感染症研究所, 細菌第二部, 主任研究官 (50555761)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | アシネトバクター属 / カルバペネム耐性 / カルバペネマーゼ |
研究実績の概要 |
アシネトバクター属のカルバペネム耐性化が世界的に進んでいる。その主な耐性機構はOXA-23型、OXA-58型、OXA-40型、IMP型、NDM型などのカルバペネマーゼ遺伝子を獲得し、産生することによる。それに加えて、アシネトバクター属のうちアシネトバクター・バウマニは、染色体上にOXA-51型カルバペネマーゼ遺伝子を元来有しており、獲得型カルバペネマーゼ遺伝子によらない耐性機構も有する。本研究では、アシネトバクター属のカルバペネム耐性化のメカニズムを明らかにするとともに、それに基づく検査診断方法の開発を目的とする。 平成28年度は、獲得型カルバペネマーゼ非産生の臨床分離アシネトバクター・バウマニ 160株のOXA-51型カルバペネマーゼ遺伝子配列をシークエンスにより決定し、カルバペネム系抗菌薬に対する最小発育阻止濃度(MIC)と比較した。産生するOXA-51型カルバペネマーゼ遺伝子配列がOXA-66であった株は全てCLSI2015の基準で「感性」と判定されたのに対して、OXA-82等の5種類の遺伝子型産生株では、「耐性」と判定される高いMICを示した。耐性株の産生するOXA-51型カルバペネマーゼの配列は、OXA-66に比べて1アミノ酸置換を生じる1塩基置換のみを認めた。このことから、染色体上に元来存在するOXA-51型カルバペネマーゼ遺伝子の変異によってカルバペネム耐性化することが示唆された。これらのカルバペネム耐性化への寄与を明らかにするために、OXA-66及びOXA-82等をコードする遺伝子のクローニング株を作製検討している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画に比べてより多くの臨床分離株を解析対象に含めた。その結果、より多くの種類のOXA-51型カルバペネマーゼ遺伝子を今後の解析に用いることが可能となった。そのため当初計画していたクローニングの実験を次年度に実施することとした。 さらに、獲得型カルバペネマーゼ産生50株のゲノム配列解読を実施し、データ解析を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
OXA-51型カルバペネマーゼ遺伝子クローニング株を完成させ、それぞれの遺伝子型のカルバペネム耐性化への寄与を明らかにする。また、カルバペネマーゼ耐性に寄与するとの報告のあるその他の因子、具体的には薬剤排出ポンプをコードする遺伝子(adeABC)や外膜ポーリンをコードする遺伝子(carO、oprD等)の発現量とカルバペネム系抗菌薬のMIC値との相関を調べ、カルバペネム耐性化への寄与を検討する。 ゲノム配列解読を実施した獲得型カルバペネマーゼ産生株のデータ解析を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度末納品等にかかる支払いが平成29年4月1日以降となったため、当該支出分については次年度の実支出額に計上予定。 クローニング実験等、一部の実験を次年度実施する計画に変更したため、関連する試薬等の購入を次年度使用額とした。
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次年度使用額の使用計画 |
上記のとおり
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