研究実績の概要 |
本研究は、我々が腫瘍マーカーとして注目するポリアミンの一種のN1,N12-ジアセチルスペルミン(DiAcSpm)が、がん患者の尿中で排泄量が上昇するメカニズム解明に向けた研究である。DiAcSpmの生成には7種のポリアミン代謝酵素が関わっている事が知られており、それらすべての代謝酵素の活性変動を詳細に解析する事により上昇機序解明の糸口を探ることを目的としている。生体内のポリアミン解析に不可欠となる酵素活性測定法の包括的かつ効率的な方法の確立を行った。 平成28年度は、酵素活性測定法の検討に用いる精製酵素と酵素反応に用いる安定同位体標識化合物基質の獲得を行った。平成29年度は、それらを用いて7種の酵素の反応条件や特異的阻害剤を用いての測定条件の確認などの検討を行った。さらに、決定した各酵素の最適な測定条件で、活性の希釈直線性や添加回収試験などのバリデーションを精製酵素と生体試料から得た抽出液を用いて行った。また、前年度に明らかとなった質量分析を用いた際に起こる特有の問題を解決するため、それを回避した新たなデザインの安定同位体標識基質の合成を試みた。 今年度の時点で、安定同位体標識化合物と質量分析を用いた新規の酵素活性測定法を確立できたため、生体内のポリアミンを解析するのに最適な生体試料からの前処理条件を検討した。さらに生体内のポリアミン動態を解析するモデルとしてラットの再生肝を用い、部分肝切除後からの再生過程におけるポリアミン代謝酵素の活性変動とそれに伴ったポリアミン成分の変動の解析を行った。
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