研究課題/領域番号 |
16K19213
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
泉 仁 高知大学, 教育研究部医療学系臨床医学部門, 助教 (60420569)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 肩痛 / 上腕二頭筋長頭腱 |
研究実績の概要 |
実験1.上腕二頭筋長頭腱(LHBT)由来の痛みの特徴を調べるためのヒト実験痛モデル研究 健常成人14人を対象に予定どおり実験を遂行し、データを取得することができた。LHBTへの高張食塩水注射後の痛みの最大値は6.6 [4.3-7.2] cm (中央値[四分位範囲])、持続時間は7.6 [6.5-9.9]分であった。全例に肩前面痛を、10例に肩外側痛を、6例に肩後面痛を認めた。注射後の結節間溝の圧痛閾値は注射前の68±4 % (平均±標準誤差)に、肩外転筋力は注射前の71±5 %に、肘屈曲筋力は69±4 %に有意に低下した。等張食塩水注射では同様の変化を認めなかった。長頭腱由来の痛みは必ずしも肩前面に限局しないこと、腱に構造的、生体力学的異常がなくても結節間溝の圧痛閾値および肩外転筋力、肘屈曲筋力を約3割低下させることが明らかになった。
実験2.腱板断裂肩におけるLHBTの神経支配の特徴および理学・画像所見との関係を調べるための臨床研究 予備実験として腱板修復術時に切除したLHBTおよび滑膜の免疫組織化学染色(PGP9.5、CGRP、Peripherin)を行った。LHBTは予想したよりも染色性にばらつきがあり、サンプルの抽出方法、固定方法、凍結切片の作製方法、染色方法(酵素抗体法および蛍光抗体法)について適宜変更を加えながら疼痛関連分子の定量評価に耐えうる安定した染色性が得られるプロトコールを検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実験1に関しては特に問題なく遂行できており、得られた結果も当初の仮説と一致している。実験2に関してはLHBTの染色性が予想したよりも良好でなかったため予備実験を繰り返したが、プロトコールは概ね固まってきており、計画上主にこの実験を行う予定であった平成29年度に繋げられると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
実験1に関してはデータ取得を継続するが、既に仮説を証明しうる結果が揃いつつある。痛みを伴う実験であるため、過去のヒト実験痛モデルの論文を参考に、サンプルサイズに問題のない範囲で予定よりも少ない被験者数で実験を終了することを考えている。その後データ解析と論文作成を行う。 実験2に関しては、予備実験から得られたプロトコールを元にLHBTの免疫組織化学染色を行い、予定どおり組織の神経支配の特徴と理学・検査所見との関係を調べていく予定である。万一LHBTの染色データが安定して得られない場合には、ELISA法などの別の手法を用いて定量評価することも視野に入れている。
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次年度使用額が生じた理由 |
染色性を確かめるために免疫組織化学染色用の抗体を数種類購入した際、キャンペーン割引があったため予定支出額との間に差が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
消耗品費として使用する。
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