疼痛遷延にともなう大脳皮質感覚野応答の変容を記録するためのフラビンタンパク蛍光イメージング実験を行った。本研究の目的は三叉神経領域における慢性疼痛の大脳皮質応答変容を調べることであるが、マウスにおける同領域は非常に狭小であることから、30年度に一般的な慢性疼痛モデルにおける皮質応答を基礎実験として調べるため、マウス膝関節炎症モデルを作成し、フラビンタンパク蛍光イメージング実験を実施した。その結果、膝関節炎症により大脳皮質の感覚応答の鋭敏化が見いだされた。31年度に引き続きこの実験系の条件検討、再現性の確認を行った。実験方法として、マウスに回復が可能な麻酔である塩酸メデトミジン・ミダゾラム・酒石酸ブトルファノールの3種混合麻酔を施し、後肢膝蓋骨直下の皮下(膝関節腔内)に起炎物質であるカラゲニンを注入し、飼育ケージに戻して1週間飼育した。その後ウレタン麻酔下で頭部固定装置に固定、状態で頭蓋の皮膚を切開し、体性感覚野を中心とした大脳皮質直上の頭蓋骨を露出した。その状態で、両側膝関節の皮膚を綿棒の軸でつつく機械的刺激(通常状態であれば非痛覚の強度)を与え、刺激に対する大脳皮質感覚野応答をフラビンタンパクイメージングにより記録した。その結果、本システムで記録できるフラビン応答には非常に大きな個体差があり、30年度に見いだされた結果は再現性に乏しい結果となった。そのため記録装置の光源の交換、マウスの系統や週齢を変更するなど再現性の高い良好な記録が取れる条件を模索したが、本年度内には十分な条件を見出すことが出来なかった。
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