粒子線治療における呼吸性移動を伴う臓器に対しての照射は、体内臓器位置の日々の変化により、飛程の変化の主な要因となる高密度の骨と、腫瘍の位置関係が計画通りでない場合、安全に治療できないと判断することが多い。しかし、腫瘍のみに着目し、危険臓器に考慮しながら計画位置に対して腫瘍位置合わせをすることで、照射が可能となる症例が確認されている。この場合、現状では治療時に即時対応可能で定量的な飛程検証は難しい。そこで、粒子線ラジオグラフィを既存のIGRTと同程度の使用感で利用できる飛程検証技術開発に向けた基礎検討として、既存のIGRT技術を利用して、粒子線治療における飛程を考慮した腫瘍位置合わせの有効性を検証した。 肝臓への照射で、骨合わせでは治療不可とされる症例において、腫瘍位置合わせを実施することで、線量分布の改善が可能かを検証した。検証に使用した臨床画像データは、X線透視画像で腫瘍位置を確認するために、腫瘍近傍に留置されたマーカが球状ではなく複雑で、一定の形状をしていないため、これに対応したマーカ自動検出ツールを作成した。加えて、マーカの動きと治療中の照射ログを同期させ、詳細な解析をする手法を確立し自動化ツールを作成した。これらにより実照射された呼吸位相を取得して、実効線量分布のシミュレーションが可能となった。次に腫瘍位置合わせした場合の腫瘍と、骨などを主とした周囲の臓器との位置変化による飛程の変位が予測可能かを検証した。実治療で計画位置からの腫瘍と骨の相対位置が大きく変化した症例について、当該治療時のマーカ位置の解析結果から、照射対象臓器と危険臓器にのみ体動を反映させた仮想的な4DCTを作成し、治療ビームをフォワード計算して、実CTとの線量分布を比較した。以上から、飛程検証に基づく腫瘍位置合わせの有効性を確認した。
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