前年度までに治療中の腫瘍の縮小や患者の体型変化を適切に推定するための変形画像位置合わせアルゴリズムの開発を行った。 平成30年度は、3Dプリンタを用いて実患者を模擬したファントムを作製し、開発したアルゴリズムの検証に用いることが可能であるか検討を行った。放射線治療前と放射線治療後の患者CT画像を用い、体輪郭、骨構造、管腔構造の3次元的な形状をモデリングした。モデリングにより作成した3次元データを3Dプリンタで出力することにより、変形量が既知の1対のファントムを作成した。3Dプリンタの出力精度は0.1 mm以内であり、幾何学的な形状の再現精度が十分に高いことが確認された。 作成したファントムを用いた場合の画像位置合わせ精度は2.7±1.8 mmであり、変形画像位置合わせの精度評価を行うことが可能であった。また本手法では、作成したファントムを他施設に郵送することにより、施設間での位置合わせ精度のばらつきを評価することも可能である。 本研究は、三次元原体照射の治療計画を患者位置合わせ用のcone-beam CTを用いて再計画するソフトウェアを開発し、適応放射線治療を簡便に行うためのシステムを構築することを最終的な目的とする。本研究ではそのために必要な要素技術の開発を行った。これらの技術を統合することで、自動で再計画を行うことのできるシステムが作成可能である。将来展望として、このシステムを用いることで患者の治療成績向上及び副作用軽減に繋がることが期待される。
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