研究課題
強度変調放射線治療(IMRT)はターゲットへの高い線量集中性と周辺の正常臓器への線量低減を同時に達成できる治療法であるが、投与される線量の不確かさが従来の3D-CRTと比べて大きい治療法と言える。一般に、ある患者に行われるIMRTにどのような不確かさが潜んでいるか、それらにどのくらいの臨床上のインパクトがあるかを事前に明示することが難しいことが知られている。本研究の目的は、IMRTに発生する不具合の様式(「故障モード(failure mode)」)の特定に適した新しい線量分布検証法を開発と、機械学習の手法を応用してIMRT線量分布検証結果のパターン解析から故障モードの特定を自動で行うことのできるシステムの開発である。従来IMRTの線量検証結果の解析に広く用いられてきた「ガンマ解析」では、2次元線量分布同士の一致度を「パス率」という単一の代表値だけで簡便に評価できるので便利であるが、故障モードの特定を行う事は難しい事が知られている。研究実施計画によると平成28年度は、故障モードの判別に適した新たな線量分検証法の開発と、IMRT故障モードのデータベースの構築を行うことになっている。故障モードの判別に適した新たな線量分検証法の開発に関しては、様々な線量分布のデータを解析することにより、2次元線量分布比較において2次元ヒストグラムを利用することの有効性が示された。一方、IMRT故障モードのデータベースの構築は現在進行中である。
3: やや遅れている
本年度の研究実施計画のうち、IMRT故障モードのデータベースの構築(様々なIMRT線量分布に対して意図的に誤差を発生させたもの)に予想以上に時間がかかっていることによる。対象疾患や治療計画によって線量分布に大きなばらつきがあることが分かり、データ選択において予想以上に慎重な検討が必要であったことがその理由である。
平成29年度も、引き続き平成28年度の研究実施計画課題であるIMRT故障モードのデータベースの構築を行っていく。出来るだけ早くデータベースの構築を完了させ、平成28年度に発生した遅れを取り戻す事を目指す。その後は、速やかに平成29年度の研究実施計画である故障モードを自動で判別する機械学習システムの開発に移行し、本課題研究の完遂を目指す。
平成28年度に購入した数値計算用ワークステーションの価格が当初入こんでいた価格より低価格であったことと、当初購入を予定していたガフクロミックフィルムの購入を行わなかったことが主な理由である。
平成28年度に購入予定だったガフクロミックフィルムは、平成29年度に購入を予定している。また、国内外の学会での研究成果発表を積極的に行う事も予定している。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件)
The Japanese Journal of Radiology
巻: 35 ページ: 95-100
10.1007/s11604-016-0606-7
The Journal of Radiation Research
巻: 57 ページ: 709-713
10.1093/jrr/rrw092