研究実績の概要 |
昨年度より引き続き、6Li含有水シンチレーターの作成とその性能評価を行なった、作成した水シンチレーターは界面活性剤としてドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、蛍光剤として2,4-ジフェニルオキサゾール(PPO)、Li化合物として臭化リチウムを水に混ぜたものである。前年度、励起スペクトルなどを測定した結果を元に、2インチ光電子増倍管とガンマ線源(60Co、137Cs、22Na)での発光量の測定を実施した。測定には筑波大学数理物質系物理学域・飯田氏の協力を受けた。すると、上記の水シンチレーターの構成ではブラックライトでの発光は目視で確認できるものの、十分な発光量が得られないことが判明した。液体シンチレーターは放射線などが入射してきた時、液体中に存在する分子を励起し、そのエネルギーが伝達することにより光を放出している。したがって、作成した水シンチレーターはエネルギー伝達効率が悪いため発光量が少ないのではないかと考え、エネルギーの伝達効率が高い物質を混ぜた構成を試してみることにした。液体シンチレーターの中でも、特にベンゼン環を持った溶媒はエネルギー伝達効率が高いと知られている。そこで上記の組成に有機溶剤であるプソイドクメンを新たに加えた水シンチレーターを作成し、ガンマ線源にて発光量の測定を行なった。すると、有機溶剤を入れなかった場合に比べて10倍以上の発光量を得ることができた。この組成による水シンチレーターの作成は世界でも初めての試みであり、2018年11月10日から17日までオーストラリア・シドニーで開催された国際会議 IEEE Nuclear Science Symposium and Medical Imaging Conference においてその結果を報告した。
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