研究課題
ダイオキシン類は、内分泌かく乱作用が懸念される環境化学物質である。ヒトでは、胎児期曝露による出生体重への影響の報告があるが、胎児期曝露によるDNAメチル化への遺伝環境交互作用を検討した報告はほとんどない。そこで、胎児期の母のダイオキシン類曝露がその代謝酵素の遺伝子型の違いによって児のインスリン様成長因子2型(IGF-2)、H19、Long interspersed nuclear element-1 (LINE1)メチル化に影響を及ぼすかを明らかにすることを本研究の目的とした。出生前向きコホート「環境と子どもの健康に関する北海道スタディ」の母児169組を対象に実施した。交絡因子を調整した重回帰分析で検討したところ、妊娠後期のダイオキシン類濃度が10倍増えると、IGF-2メチル化率は0.79%低下し、H19メチル化率は0.09%低下し、LINE-1メチル化率は0.07%増加した。次に、母のダイオキシン類代謝に関わる芳香族炭化水素受容体(AHR; rs2066853)、AHRリプレッサー(AHRR; rs2292596)、シトクロムP450 1A1(CYP1A1; rs4646903, rs1048963)、CYP1A2 (rs762551)、CYP1B1 (rs1056853)、グルタチオン S-転移酵素(GSTM1; Int/del)、GSTT1 (Int/del)、およびNADPH キノンオキシドレダクターゼ(NQO1; rs1800566)遺伝子型による違いを検討したところ、ダイオキシン類とIGF-2、H19、およびLINE-1メチル化率との関連に違いはなかった。しかし、本研究での解析対象者が限定されていたために、十分な統計学的パワーが得られなかった可能性がある。今後、他の環境化学物質を分析し、児のDNAメチル化への影響に遺伝環境交互作用が関与するかを検討していく。
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Toxicology
巻: 390 ページ: 135-145
10.1016/j.tox.2017.08.010.
https://www.cehs.hokudai.ac.jp/
https://www.cehs.hokudai.ac.jp/hokkaidostudy/