研究実績の概要 |
学童期の子どもの農薬に対する日常的な低濃度曝露が、ADHD等の神経発達障害と関連する可能性が指摘されている。しかしながら、生体試料を用いて、有機リン系農薬やネオニコチノイド系農薬に対する曝露の影響について検討した研究は世界的に少なく、特に近年使用量が増加傾向にある後者との関連を検討した研究は全く存在しない。そこで本研究では、大規模前向きコホート(北海道スタディ)に参加している母児のデータを用いてこれらの検討を行った。 具体的には、児が7歳時に尿を収集し、8歳時にコナーズ3Pを実施することで、ADHD傾向の評価を行い両者の関連を検討した。尿検体とコナーズ3Pのデータが揃う1518名の中からケースとコントロールが選定された。コナーズ3Pの3AI指標、多動衝動指標、不注意指標のいずれかがT65以上の児をADHD傾向群として定義した。同群に分類された児は195名であった。195名のうち43名をランダム抽出してケース群とした。他方、非ADHD傾向群から79名をランダム抽出してコントロール群とした。 上記122名について、採取した尿サンプルから有機リン系農薬代謝物(DMP, DEP, DMTP, DMDTP, DETP, DEDTP)を、ネオニコチノイド系農薬および代謝物(ジノテフラン、ニテンビラム、チアメトキサム、クロチアニジン、イミダクロプリド、チアクロプリド、アセタミプリド、アセタミプリド代謝物)を測定しADHD傾向との関連を検討した。ケースであるか否かを従属変数としたロジスティック回帰分析を実施した結果、尿中DMTP濃度とADHD傾向との間に、一部、有意な関連が観察された。
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