研究課題/領域番号 |
16K19254
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研究機関 | 福島県立医科大学 |
研究代表者 |
大類 真嗣 福島県立医科大学, 医学部, 講師 (50589918)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 自殺 / 災害 / 原子力発電所事故 / メンタルヘルス / 疫学 |
研究実績の概要 |
・本研究において福島第1原子力発電所事故後の原子力災害における避難区域内の自殺死亡率の動向を明らかにすることを目的とし、また得られた結果を、災害後の避難者への支援活動、避難者を含めた地域住民全体のメンタルヘルス対策に資するため調査を実施した。 ・平成28年度は、厚生労働省人口動態調査の2009年3月から2015年12月までの福島県内市町村別・簡単死因別死亡数の目的外利用申請を行い、そのデータを基に、上記避難区域内の自殺死亡率を把握した。さらに避難区域のうち、2015年時点で市町村の全域が避難区域に指定されている町村(楢葉町、富岡町、大熊町、双葉町、浪江町、葛尾村、飯舘村、以下「全域避難」とする。)とすでに避難指示が解除あるいは市町村の一部分が避難区域に指定されている市町村(田村市、南相馬市、川俣町、広野町、川内村。以下「解除/一部避難」とする。)に分けて、自殺死亡率の推移を把握した。 ・その結果、避難区域内の自殺死亡率は、男性で事故直後に上昇したが、以後減少し、3年ほど経過した後、上昇に転じている結果であった。一方女性に関しては、男性のような事故直後の上昇は認めなかったが、2年後あたりで一時的な上昇を認めた。年齢階級別では、30歳未満の若年層と、70歳以上の高齢者において事故後の上昇があった一方で、50-60歳代の男性が大きく減少した結果であった。 ・以上の結果より、避難区域全体で見れば大きな自殺死亡率の上昇は認めなかったものの、解除/一部避難では、減少幅は小さく、むしろ直近の状況ではやや上昇傾向にあった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の予定では、29年度も不足分のデータ収集やデータ分析に時間を当てていたが、28年度のデータ収集がスムーズに行えたこともあり、当初の予定より早く進展している状況である。
現在成果をまとめ国際雑誌への投稿の準備を行っている状況である。
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今後の研究の推進方策 |
早急に論文掲載に向けて取り組む方向であり、得られた結果を基に、避難区域の自治体と連携した自殺対策の進展に取り組むこととしている。
具体的には、解除/一部避難の地域の方が自殺死亡率上昇の危険性が高いことか考えられるため、2017年4月までに指示が解除された自治体を中心に、ゲートキーパー養成や、住民健診の場を活用したスクリーニング等の実施を検討している。
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次年度使用額が生じた理由 |
データ収集に関して、当初は県内各保健所に出張し、死亡小票を閲覧してデータ収集する予定であったが、結果的に厚生労働省で所有している磁気データのみで全てを収集でき、結果的に旅費に残額が生じたため。
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次年度使用額の使用計画 |
国際雑誌への投稿に向け、英文校正にかかる費用や、成果発表並びに、避難区域内の自治体での自殺対策に関する検討やその実施に係る旅費等に使用する計画である。
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