研究実績の概要 |
メタボロームの網羅的測定技術を用い、尿中と血漿アミノ酸の2つのメタボロームプロファイルを作成し、肥満関連因子との関連性をそれぞれ検討することにより、肥満に関連する代謝マーカーを明らかにするとともに、尿中・血漿中のプロファイルによる違いを明らかにすることを目指した。また、新たに血漿中脂質のメタボローム解析も行った。 尿メタボロームでは、約4,000名のメタボロームプロファイリングにより、肥満の判別に寄与する物質は4つのアミノ酸代謝経路(グリシン、セリン、スレオニンの代謝、システインとメチオニンの代謝、フェニルアラニンの代謝、ヒスチジンの代謝)に関連する物質であった。血漿メタボロームでは、約3,000名のメタボロームプロファイリングと肥満度に関連する代謝物マーカーの検証を行った。肥満度には、BMI、腹囲周囲径、内臓脂肪蓄積量、インスリン抵抗性(HOMA-R)を用いた。肥満度の指標とした因子間にはそれぞれ正の相関がみられ(r > 0.5)、内臓脂肪蓄積量とインスリン抵抗性(HOMA-R)は正の相関(r = 0.51, P<0.001)がみられた。肥満の判別に寄与するのは、2つのアミノ酸代謝経路(フェニルアラニンの代謝、アラニン、アスパラギン酸、グルタミン酸の代謝)に関連する物質であった。血漿と尿メタボロームを併せて検討すると、フェニルアラニンの代謝に関わる物質が共通して肥満の判別に寄与していた。 血漿脂質メタボロームでは、約370名のメタボロームプロファイリングにより、3つの脂質代謝経路(脂肪酸の生合成、リノール酸の代謝、不飽和脂肪酸の生合成)に関連する物質であった。今後も、得られた集団並びにデータセットについて、フォローアップ研究を続けながら、メタボローム解析とメタボロームプロファイリングによる検討を進め、肥満に関連する代謝物マーカー研究の一助になるべく検討を進めたい。
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