研究課題/領域番号 |
16K19262
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
中山 渕利 日本大学, 歯学部, 助教 (10614159)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | サルコペニア / 窒息 / 摂食嚥下機能 / 咀嚼機能 |
研究実績の概要 |
28年度は、咀嚼機能に大きな影響を及ぼす舌の機能について、これまで継続して行っていた調査結果をもとに分析した。本調査では、急性期病院からリハビリテーション病院に入院し、脳卒中や神経筋疾患の既往がない65歳以上の高齢者174名を対象に舌圧と全身筋力の指標である握力と栄養状態(Mini Nutritional Assessment-short form(MNA-SF))、経口摂取状況(Functional Oral Intake Scale (FOIS))を評価した。多変量解析の結果、舌圧は握力と栄養状態と有意に関連していた(握力:coefficient = 0.33, 95 % confidence interval (CI) 0.12-0.54,p = 0.002), MNA-SF (coefficient = 0.74, 95 % CI 0.12-1.35, p = 0.019)。さらに嚥下機能は舌圧と有意に関連していた(舌圧:coefficient = 0.02, 95 % CI 0.00-0.15, p = 0.047)。この研究結果から、サルコペニア患者では舌の機能低下があり、それが経口摂取を困難にしている可能性が示唆された。この研究論文は、英文雑誌Dysphagiaに掲載された。 また、全国の介護施設職員にアンケート調査を実施し、窒息経験のある入所者の全身状態について調べた。このアンケート項目の中には、サルコペニアに関連した項目が含まれており、窒息経験のある要介護高齢者にこの項目が該当しているか否かを分析する予定。現在、72施設にアンケートを依頼し、38施設より回答を頂き、事例数は合計130名となった。現在、調査結果を解析中である。さらに、サルコペニアの方の咀嚼機能および咳嗽力について計測できる機器を購入し、29年度の調査研究に向けた準備を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画では、初年度よりリハビリテーション病院にてサルコペニアの方の咀嚼機能と咳嗽力の調査を行う予定であったが、調査を予定していた病院の体制が変わり、調査が行えなくなった。そのため、28年度については、当初の計画にはなかったが、これまでサルコペニア患者に対して収集したデータをもとに、咀嚼機能に大きな影響を及ぼす舌の機能について分析した。この調査では、急性期病院からリハビリテーション病院に入院し、脳卒中や神経筋疾患の既往がない65歳以上の高齢者174名を対象に舌圧と全身筋力の指標である握力と栄養状態、経口摂取状況を評価した。多変量解析の結果、舌圧は握力と栄養状態と有意に関連していた。さらに嚥下機能は舌圧と有意に関連していた。その結果、サルコペニア患者では舌の機能低下があり、それが経口摂取を困難にしている可能性が示唆された。この研究論文は、英文雑誌Dysphagiaに掲載された。また、これまでに窒息経験のある施設入所者に、サルコペニアの疑いがあるか否かを、72施設の施設職員にアンケート調査を実施した。その結果、合計130名分の事例を集めることができたため、現在収集した事例について分析を行っている。さらに、28年度に咳嗽力を計測できる機器を購入し、今年度は咀嚼運動を解析できるソフトを購入することで、29年度よりデイケアに通所中の方の咳嗽力と咀嚼機能について調査を行う予定である。 上記のような状態にあるため、当初予定していた調査については遅延しているが、当初の計画にはなかったサルコペニア患者の経口摂取を妨げる要因の解明と窒息に関連するアンケート調査を行うことができたため、計画は概ね順調に進んでいると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
1. 28年度には窒息経験のある施設入所者130名の身体的特徴について記載されたアンケートを収集した。しかし、まだ分析を行っていないため、29年度には収集したデータから窒息関連因子を特定するために解析を行う。とくに、アンケート項目の中で、サルコペニアに関連した項目に着目し、サルコペニアと窒息との関連性について検討する。この内容は学術大会等に発表する予定。 2. 29年度に咀嚼運動を解析できるソフトを購入し、デイケア、デイサービスに通所する高齢者を対象に、窒息の要因と考えられる咳嗽力と咀嚼力を測定する予定。サルコペニアの方のデータが30名ほど集まった時点で、サルコペニアの方と健常者とを比べ、機能低下の有無について検討を行う予定。 3. これまで収集したサルコペニア患者のデータをもとに、咀嚼機能と関連性のある口唇閉鎖圧について、舌圧と同様に解析を行い、サルコペニア患者の口腔機能について新たな知見を学術大会等で発表する予定。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の計画では、初年度より回復期病院でサルコペニアの方の咀嚼機能と咳嗽力の調査を行う予定であったため、咳嗽力を測定する機器(オートスパイロ)とその他の消耗品に525,106円を使用した。その後、咀嚼運動を計測するコンピュータソフトを購入して、調査研究を行う予定であった。しかし、調査を予定していた病院の体制が変わり、調査が行えなくなった。そのため、咳嗽力と咀嚼運動の調査は28年度には行わないことにしたため、咀嚼運動を計測するコンピュータソフトの購入は保留とした。28年度については、当初の計画にはなかったが、これまでサルコペニア患者に対して収集したデータをもとに、嚼機能に大きな影響を及ぼす舌の機能について分析した。その結果、サルコペニア患者では舌の機能低下があり、それが経口摂取を困難にしている可能性が示唆された。この論文の英文校閲料と投稿料、掲載料に172,053円を使用した。
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次年度使用額の使用計画 |
直接経費として、咀嚼運動を解析するコンピュータソフト(DIPP-Motion V)に600,000円、筋電計の電極および検査食材等の消耗品に100,000円使用する予定。旅費としては、いくつかのデイサービスおよびデイケアで調査を行う予定のため、その交通費として15,000円使用する予定。また、その調査補助の謝金として90,000円を使用する予定。さらに、論文投稿時の英文校閲料として、100,000円を使用する予定である。
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