研究課題
本研究では高齢者の多くが罹患しているサルコペニアに着目し、サルコペニアと窒息との関連性について検討した。まず、介護施設職員に対してアンケート用紙を配布し、施設内で過去に食事中の窒息で緊急対応を行った入所者の、当時の特徴について回答してもらった。120名分のアンケート結果を集計したところ、88%がサルコペニアのスクリーニング指標であるSARC-Fが陽性(サルコペニアあり)であった。また、半数以上で疲労しやすく、姿勢がくずれやすく、咀嚼回数が少ないといったサルコペニアの高齢者に多く見られる特徴が見られたことから、サルコペニアが窒息と関連している可能性が考えられた。つぎに、65歳以上の回復期病院に入院した患者245名を対象とし、原疾患、CCI 、CRP、MMSE、MNA-SF、BI、BMI 、Eichner Index、FOIS、CC、握力、舌圧、口唇閉鎖圧を測定して、多変量ロジスティック回帰分析を行った。その結果、サルコペニアによる摂食嚥下障害の有無は、年齢、性別、CCI、CRP、MMSE、握力、CCを調整後でも、口唇閉鎖力および舌圧と有意な関連性を認めた。そのため、サルコペニアによって口唇閉鎖力および舌圧が他の因子の影響を考慮したとしても、有意に低下することが示唆された。さらに、サルコペニアによって摂食嚥下障害となった2症例の栄養状態、骨格筋量、握力、舌圧、口唇閉鎖圧、舌骨移動量の回復過程を追跡調査した結果、栄養状態、骨格筋量、握力の向上に伴って、口唇閉鎖圧と舌骨移動量の向上を認めた。以上の横断研究および追跡研究の結果から、サルコペニアによって口唇閉鎖力と舌圧、舌骨移動量が影響を受けることが示唆された。口唇閉鎖力および舌圧はともに咀嚼能力と関連することが知られており、咀嚼能力の低下は窒息の要因となることから、サルコペニアが窒息のリスク要因となる可能性が考えられた。
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