申請者らは、オメガ3脂肪酸が豊富に存在する遺伝子改変マウス(fat-1マウス)において、早産が抑制されることを示し、子宮内でのオメガ3脂肪酸代謝について網羅的な脂質メタボローム解析により明らかにした(Sci Rep. 2013 Nov 1;3:3113.)。fat-1においては、同系野生型に比べ、EPA(エイコサペンタエン酸)の代謝物「18-HEPE」が有意に上昇しており、AA(アラキドン酸)代謝物であるプロスタグランジン類が有意に低下していた。さらに、18-HEPEの下流の代謝物であるレゾルビンE3(RvE3)の直接投与による早産抑制効果を示した。これらの結果より、オメガ3脂肪酸による早産予防効果の機序として、AAに対する拮抗作用と、EPA代謝産物による直接的作用が示唆された。本研究では、(1)基礎研究として、EPA代謝産物による早産抑制効果についてさらなる検証と機序の解明を行い、(2)臨床研究としてEPA製剤の積極的な摂取が早産を予防になるのかどうかを前向きに検証することを目的とした。 本研究期間内の実験で、マウス早産モデルにおいて、18-HEPE10 μg/bodyの投与が早産を抑制することを示した。一方、RvE3は、1/1000量である10 ng/bodyの投与で早産を抑制し、子宮内炎症性サイトカイン遺伝子発現が有意に低下していた。 臨床研究として、早産ハイリスク妊婦に対するEPA製剤内服のプラセボとのランダム化比較試験を計画していたが、倫理委員会との協議により、対照をヒストリカルコントロールとして、EPA製剤単群で行うこととなった。登録システムの開発や、当初はプラセボの開発も進めていたことなどで、予定より大幅に遅れた。H29年度より登録開始となったため、来年度も継続予定であり、解析終了後、結果については国際誌や学会等で発表する予定である。
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