研究課題/領域番号 |
16K19269
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
小田切 崇 新潟大学, 医歯学系, 助教 (80770221)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | インフルエンザウイルス / インフルエンザワクチン / インフルエンザ流行 |
研究実績の概要 |
B 型インフルエンザウイルス(B型ウイルス)はA 型インフルエンザウイルス(A型ウイルス)と同様に分節性のゲノムを持つが、A型ウイルスのように亜型に分かれることはなく、抗原性はHA の遺伝学的特性から2 つの系統(Victoria 系統とYamagata 系統)に分類される。これまでのインフルエンザワクチンはA型2種類(A/H1N1、A/H3N2)とB型1種類(B/Victoria系統かB/Yamagata系統のどちらか)の3価のワクチンであったため、B型ウイルスに関しては流行する系統とワクチンに含まれる系統のミスマッチが度々生じて、問題になっていた。このような状況を打開するために、2015/2016シーズンから日本でもB型の2系統を両方用いた4価のワクチンが導入された。このような新規ワクチン導入による干渉から、ウイルスが生き残るために遺伝子再集合(リアソートメント)などを起こし、これまでに流行が観られなかった新しいウイルスが出現することが考えられる。本研究はこの新規4価ワクチン導入後のB型ウイルスの進化動態の変化と伝播経路の解明を目的としている。 初年度である平成28年度は、200株以上のB型ウイルスの分離株を得ることができ、それらの株の一部をHA遺伝子とNA遺伝子に関して塩基配列の決定を行った。その結果、HA遺伝子とNA遺伝子の系統の組み合わせが異なる株(Inter-lineage-reassortant)を見つけることに成功した。 このような通常とは流行している株とは異なる株を起点にデータベースに登録されている海外の株も含めて株情報から伝播経路の推測を行うことで、今後のインフルエンザ対策に役立つことができると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度も、調査ネットワークを構築している全国の小児科医の協力により、900検体以上のインフルエンザ患者鼻汁検体を得ることができた。これらの検体インフルエンザウイルスに感受性のあるイヌ腎臓尿細管上皮細胞由来の細胞(MDCK 細胞)を用いてウイルスの分離を試みたところ、200株以上のB型ウイルスを分離することに成功した。 分離されたB型ウイルスのいくつかの株をHA遺伝子とNA遺伝子に関して塩基配列の決定を試みたところ、HA遺伝子とNA遺伝子で系統の組み合わせが異なる株(Inter-lineage-reassortant)を見つけることに成功した。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、調査ネットワークを構築している全国の小児科医と連携し、検体を採取してInter-lineage-reassortant株のような特殊株の探索を行う。 また、HA遺伝子とNA遺伝子のみでなく、ウイルス粒子を構成するその他6つの遺伝子に関しても塩基配列を決定し、構成遺伝子の組み合わせを確認することで遺伝子再集合(リアソートメント)の有無や、そのパターンを検討する。 また、既にデータベース上に登録されている株で同様の株があるかを探索し、それらの株情報を用いることで、どのような経路でB型ウイルスが伝播してきたのかを検討する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
予算額の84.89%を費やしてほぼ計画通りに研究を遂行した。しかしながら、効率的に研究を遂行したため残金が発生した。
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次年度使用額の使用計画 |
HA遺伝子とNA遺伝子以外にもウイルス粒子を構成する他6本の遺伝子に関して塩基配列を決定するための新規プライマーを設計・購入する予定である。 また、解析する株数を増やすことで、株情報を増やし、より信憑性のある伝播ルートの解明を検討することを計画している。そのための遺伝子検査試薬を購入する予定である。
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