研究課題/領域番号 |
16K19270
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
江 啓発 名古屋大学, 医学系研究科, 講師 (20713887)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | パラオ / 違法薬物 / 大麻 / 青少年 / 嗜好品 |
研究実績の概要 |
初年度の平成28年度は主に研究課題に関する情報収集、関連機関への聞き取り調査や研究協力先との調整を行った。近年、パラオにおける違法薬物使用に対して政府当局ないし社会全体の関心が高まっていることにも関わらず、過去、関連調査は僅かしか行われてこなかった。しかも、調査結果などのデータは殆ど公開されていなかった。 そのため、初年度は、まず、パラオ保健省の行動保健部門の協力を得て、報告書や内部資料による情報収集を行うことを最優先課題とした。その結果、薬物乱用に関する情報は青少年(12~18歳)の大麻や処方薬の乱用率など限定的な調査データしか存在していないことが分かった。その調査データ(2015年)によると、過去一ヶ月の間に大麻を使用したことあると答えた者は約12~18歳の人口の28%であった。それに対し、過去一ヶ月の間に喫煙したと答えたのは35%で、飲酒は25%であった。調査データを概観したところ、パラオの青少年にとって大麻はタバコなどの嗜好品に近い存在である可能性が示唆されていることが分かった。同調査では大麻の使用は同輩の間において悪い事であると思わない青少年は40%にも上った。しかしながら、大麻の使用に関連する社会的要因などの分析は行われていなかった。 そのため、本研究では、今後、保健省の許可を得て既存データの統計解析を行う予定である。初年度である今年度の進捗状況は、当初の予定から遅れているが、保健省の関係各所および研究協力者と来年度以降、調査が円滑に行えるよう、調整を行えたことは、来年度以降の研究実績につながるものと思われる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
大統領選挙による保健省内部における人事異動や公衆衛生局の所在地の移転など、計画時には予期できなかった予想外の原因により、関連部署の研究協力を計画通りには得られず、今年度は調査の実施が行えなかった。 当初の予定では、初年度の平成28年度に個人およびグループインタビューによる質的調査を行う計画であったが、研究協力先の都合により、計画した調査内容を次年度に実施することに変更した。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は質的調査が行えなかったため、平成29年度の前半に実施できるように調整を進める。また、研究協力先の都合で、平成29年度の後半に18~24歳の成人若年層の疫学調査を実施することになったため、それに合わせ、前半の質的調査の対象者を18~24歳の成人若年層とする。質的調査の結果を後半の疫学調査に用いる質問票に反映するため、質的データの分析を迅速に進める。当初、平成29年度内に質的データの分析結果を論文化する計画は平成30年度の前半に跨って行う予定である。また、パラオ保健省の既存データ(12~18歳)を分析し、平成30年度の前半から青少年を対象にした質的研究の調査準備を進める予定である。平成30年度の後半は調査結果を踏まえ、一般成人もしくは青少年の保護者を対象にした質的調査を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度は、計画時には予期できなかった予想外の原因により、関連部署の研究協力を計画通りに得られず、予定した質的調査の実施が行えなかった。そのため、計画した調査内容を次年度に実施することに変更した。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度の交付額と合わせ、初年度で行えなかった質的調査を実施する予定である。また、当初計画した平成30年度の疫学調査を一部繰り上げて行うため、予算が必要である。
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