研究課題/領域番号 |
16K19270
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
江 啓発 名古屋大学, 医学系研究科, 講師 (20713887)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | パラオ / 物質使用 / 大麻 / 高校生 / 大学生 / 社会的要因 |
研究実績の概要 |
本研究2年目の平成29年度では、初年度の平成28年度に実施できなかった研究計画を今年度の計画と合わせ、疫学調査と社会学調査の両方を行なった。疫学調査では、全国の高校生(High School)及び大学生(College)を対象とし、構造化質問票により匿名アンケート調査を行った。その結果、高校生758人と大学生228人より回答が得られた。過去1ヶ月に飲酒歴のある高校生は20%であり、それに対し大学生は50%であった。喫煙歴は前者が29%、後者が41%だった。大麻の使用歴はそれぞれが35%と30%であり、他人の処方薬を使用したのは約6%と9%だった。高校生においては、過去1ヶ月間に大麻の使用歴のある者はタバコやアルコールの使用より高いという結果が得られた。パラオでは、目的を問わず大麻の使用は法律で禁じられているにも関わらず、パラオの青少年にとっては身近な存在の物質である可能性が示唆された。また、他人の処方薬を使用する割合は、高校生と大学生の両方とも、調査前の予測より高かった。各物質の使用に影響する社会的要因(親・友人の認識など)については、現在分析中である。 社会学調査は下記の通り、大学生を対象にした5グループ(4~5人ずつ)のフォーカス・グループ・ディスカッションを行った。18-20歳男女の各1グループ;21-24歳男女の各1グループと男性留学生(パラオ人以外)の1グループである。現在、フォーカス・グループ・ディスカッションを記録した音声データの処理作業(テープ起こしや翻訳など)を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29(2年目)までに実施予定であった社会学調査については、その一部(高校生対象)が実施できなかった。これは、研究協力先のパラオ保健省の都合により、平成30年度(最終年度)に実施することに変更したためである。 しかしながら一方では、当初、平成30年度(最終年度)に予定していた疫学調査については、実施を平成29年度に繰り上げ、データ収集を完了させることができた。 以上より、総じて、今年度の研究計画はおおむね順調に進展していると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は、疫学調査(1回目)を実施し、データ入力の作業も終了した。最終年度の平成30年度は疫学データの統計解析を進め、学会などで結果発表を行なう予定である。 大学生を対象とした社会学調査のデータについては、現在、翻訳などの作業が進行中である。作業が済み次第、速やかに質的解析を行なう予定である。また、未実施の高校生を対象とした社会学調査を行い、そのデータを大学生対象の社会学調査と比較し、質的解析を進める予定である。調査結果などを踏まえ、一般成人もしくは高校生ないし大学生の保護者を対象とした社会学調査を検討する。 さらに、社会学調査などで得た知見を基に、疫学調査で使用した質問票に新たな項目を加え修正し、2回目の疫学調査を実施する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
【理由】本研究の調査の実施年度を研究協力先であるパラオ保健省の調査計画に併せ、共同で実施するよう、以下のように変更したため、次年度使用が生じた。 当初の計画では、平成29年度に高校生と大学生を対象とした社会学調査を行い、平成30年度に疫学調査を実施する予定であった。実際は、平成29年度は、社会学調査の一部(高校生対象)を実施せず、平成30年度に延期することになった。また、平成30年度に予定していた疫学調査についても、平成29年度に前倒し、調査を行うことができた。なお、パラオ保健省が疫学調査(1回目)に必要な経費を一部負担したため、2回目の疫学調査が実行可能の予算額を確保できた。2回目の調査を行い、平成29年度までの研究結果と併せて分析する必要が生じたが、平成30年度にパラオ保健省が実施する予定の調査と共同で調査を行なう予定である。 【使用計画】上記に述べた理由の通り、平成30年度の交付額とあわせ前年度予算残額を使用する。高校生を対象とした社会学調査を行なう。また、パラオ保健省の調査計画に合わせた2回目の疫学調査を実施する予定である。
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