平成30年度は、前年度の追加調査および新規対象集団の社会学調査を行なった。また、前年度まで収集した疫学調査のデータを分析し、学会などにおいて研究結果の一部を発表した。 社会学調査の実施については以下の通りである。前年度の追加調査では、18-20歳の男性大学留学生(パラオ以外のミクロネシア地域出身)を対象にしたフォーカス・クループ・ディスカッション(FGD)を1グループ(5名)実施した。今年度は、高校生を対象とした新規の社会学調査をパラオ全国の高校(5校)においてデータ収集を行なった。具体的には、コロールに位置する全国唯一の公立高校において、FGDを計4グループ(1年生2グループ、2年生2グループ、各4-6名男女混合)実施した。また、コロールに位置する私立高校2校において、各4-5名男女混合1グループ(計2グループ)のFGDを実施した。さらに、都市部を離れた2校の私立高校において、6名ずつ男女混合のFGD計2グループを実施した。 以上の調査に加え、今年度は、前年度までの社会学調査で収集した録音などのデータの処理作業(テープお越しや翻訳など)を全て完了した。今後、質的データの分析を進め、学会発表や論文などにより研究結果の公表を継続する予定である。 疫学調査ついては、次の通りである。前年度までの疫学調査で収集したデータおよびパラオ保健省の既存データを分析し、日本国際保健医療学会で合計2題の口頭発表を行なった。統計解析の結果、パラオ社会では、若者の依存性物質の使用に対して比較的に寛容であることが分かった。また、タバコと大麻の使用については、親より友人の影響が大きく、ビンロウジの使用については、親の影響が突出して大きいことが明らかになった。 本研究による分析結果の一部は既にパラオ保健省に報告しており、今後も引き続きデータ解析の結果を共同研究先と共有するとともに、パラオ保健省の施策などに助言および提案を行なう予定である。
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