研究課題/領域番号 |
16K19273
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
栄徳 勝光 高知大学, 教育研究部医療学系連携医学部門, 助教 (50552733)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 胎児期アルコール曝露 / 酸化ストレス / 遺伝子発現変化 / 神経分化 |
研究実績の概要 |
妊娠中の胎児脳へのアルコール曝露により起こる胎児性アルコール症候群(FAS)の発症機構解明のために、自家繁殖しているカタラーゼ活性の低い変異体マウス(アカタラセミアマウス:C3H/AnLCsbCsb)とその野生型マウス(C3H/AnLCsaCsa)を用いて、マウスの曝露実験系の確立に取り組んだ。先行研究で使用している実験条件を下に、胎生9日目に6g/kg bwのエタノールないし生理食塩水を腹腔内投与し、胎生19日に胚を摘出して、頭囲/頭殿長比、頭部重量/体重比を算出した。各群の胎児約20匹ずつの測定結果を解析した所、先行研究の結果に反して、アカタラセミアマウスとその野生型との間で、これらの指標の有意な差は認められなかった。 体内のアルコール代謝の9割を担う肝臓においてはアルコール脱水素酵素がアルコールをアセトアルデヒドへと酸化するが、脳内ではカタラーゼがこの反応を担う。このことから、カタラーゼ活性の低いアカタラセミアマウスを用いることで、アルコールの脳内貯留時間が長くなり、胎児脳へのアルコール曝露の影響をより観察しやすくなると考えられ、実際に先行研究ではアカタラセミアマウスが野生型に比べて頭囲/頭殿長比が有意に低い値となっていたが、その結果を再現することが出来なかった。投与しているエタノール量は報告されている量の中でも多い方であり、またFASは少量のアルコール曝露でも発症し得るとされているため、単回投与量に変更の余地は多くないが、投与回数を増やす、遺伝子発現の違いを評価する等の改善を試みる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
所属講座のスタッフの異動に伴い、研究・教育業務の引き継ぎが集中して、研究推進に支障が生じたため。
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今後の研究の推進方策 |
アルコール曝露系の改善を図るべく、アルコールの投与回数を増やす、遺伝子発現の違いを評価する等の改善を試みる。併行してゲノム刷り込み遺伝子の発現変化を評価するべく、母性ゲノムと父性ゲノムの識別が可能なF1ハイブリッドマウスを用いて解析を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
マウスの曝露実験系の確立の遅延に伴い、その後の解析のために計上していた使用額が次年度に繰り越しとなったため、次年度使用額が生じた。繰り越した予算は、主に遺伝子発現解析用の試薬等の消耗品費、研究打ち合わせや学会参加等の旅費に当てる。
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