研究課題
妊娠中の胎児脳へのアルコール曝露により起こる胎児性アルコール症候群(FAS)の発症機構解明のために、マウスF1ハイブリッドES細胞のin vitroデフォルト神経分化系を用いて作出した神経細胞におけるモノアレル発現を、親系統での発現レベルと比較した。F1ハイブリッドES細胞は交配の組み合わせとして2種類、すなわちMSMの雌とB6の雄を交配させて得られた雄の胎児胚盤胞由来のものと、その逆の組み合わせのものを用いた。マウスF1ハイブリッドES細胞の親系統であるF0系列から作出されたES細胞(MSM、B6の雄の胎児胚盤胞由来)を用いて、同様にin vitroデフォルト神経分化系にて神経細胞を作出し、神経マーカー遺伝子の親系統における発現レベルの比を調べた。F1の2つのアレルの間に発現量に偏りがあって、親系統で発現量に偏りがある場合は、当該遺伝子の上流にある発現制御領域内のシス配列の多型により発現の差異が生じていると考えられる。一方で、F1で同程度の発現レベルであったとしても親系統で発現量に偏りがある場合はトランス因子の多型により発現の差異が生じていると考えられる。親系統における遺伝子発現レベルとF1における発現レベルの相関を見ると、F1のB6アレル同士は相関するものの、親系統のB6の発現との相関は低かった。MSMアレルについてもF1同士は相関するものの、親系統のMSMの発現との相関は低かった。これらの結果から、トランス因子の多型による制御が多く関与していることが示唆された。
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