研究実績の概要 |
近年、海外の先行研究で職場におけるincivility(非尊重度)が従業員の精神的健康に影響を及ぼすことが明らかになりつつあるが、わが国ではこれらの要因による従業員への健康影響や労働生産性・医療安全についての検討は皆無である。そこで本研究では、医療機関の職員を対象に、incivilityを含む職場の心理社会的要因と、精神的健康、そして国際的にもまだ明らかにされていない身体的健康(特に循環器疾患の危険因子)、および医療安全・作業安全との関連を調べる前向きコホート研究を実施することにより、医療職における精神的及び身体的不調の未然防止と、職場の安全構築に貢献することを目的とするものである。 2年目である平成29年度は、平成28年度に調査実施への協力が得られベースライン調査を実施した関西地方の総合病院を持つ機関の全職員に対し、平成29年1月に調査の説明文書と自記式質問紙を配布し、記入済みの質問紙回収を持って研究参加の同意を得た。自記式質問紙は機密文書回収ボックス及び料金受取人払い郵便にて回収し、最終的に1404名から回答を得た。調査終了後、データ入力作業を行い、電子化したデータセットを作成した。また、抑うつ得点が高かった回答者で連絡を希望していた対象者には結果のフィードバックを行った。現在は入力済データのダブルチェック作業を行っており、完了次第ベースラインデータ及び健康診断データとの統合、解析等を行う予定である。 また、同じ尺度を用いたカナダとの二国間比較を目的とした多母集団同時解析を実施し、英文論文として発表した(Tsuno et al., J Occup Health, 2017)。
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