研究課題/領域番号 |
16K19277
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
武藤 剛 順天堂大学, 医学部, 非常勤助教 (10594971)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | アレルギー / 腸内細菌叢 / TRAF6 / 環境化学物質 |
研究実績の概要 |
アダプター分子TRAF6 (TNF receptor-associated factor 6) は元来NF-kBやMAPキナーゼ経路の活性化に関与し、自然免疫反応の制御において重要な役割を果たすことで知られるが、近年T細胞における機能が注目されている。これまでの我々の解析で、T細胞特異的にTRAF6を欠損させたマウスは、生後しばらくした後に、全身の著明なTh2型炎症を起こすことが判明した(Nat Med 2006)。さらに制御性T細胞(Foxp3発現細胞)特異的にTRAF6を欠損させたマウスを解析すると、T細胞特異的欠損マウスよりも早期から、著明な全身リンパ節腫脹・皮膚炎・関節炎を伴う激烈なTh2型炎症を起こすことが判明し、特にin vivoでの制御性T細胞の安定した生存増殖とTh2抑制能の発揮においてTRAF6が重要な役割を果たすことが示された(PLoS One 2013)。このマウスはSPF(specific pathogen free)環境よりもconventional飼育環境ではさらに早期にTh2型炎症を発症することから、環境暴露因子が何らかの形で発症のtriggerとなっている可能性が示唆される。一方で近年、全身疾病と腸管内細菌叢の多様性の変化の関連が、糞便メタゲノム解析で明らかにされつつある。アレルギー疾病やそれへの影響が示唆されるtriclosan, parabenといった環境化学物質による腸内細菌叢への影響も指摘されている。そこで今回我々は、T細胞特異的TRAF6欠損マウス(TRAF6 floxed, CD4Cre)の糞便を用いたメタゲノム解析により、TRAF6シグナル関連による腸管内細菌叢への影響について、8週齢のcKO/WTマウスを使用して検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Wt(n=6), cKO(n=7)の2群で腸管内細菌叢の多様性についてalpha-diversity, beta-diversityともに統計学的有意差を認めなかった。既報ではヒトアレルギー疾病や自己免疫疾病患者における細菌叢多様性変化が指摘され、また化学物質曝露(paraben, triclosan)に関連するアレルギー疾病患者での同様の報告を認めることから、本結果との相違の理由を検討した。その一つとして今回の測定が、8週齢前後の比較的若齢マウスを使用しており、cKOにおけるTh2炎症の早期段階であることが挙げられた。また昨年度立ち上げを検討したmethyl, ethyl, butyl, and propyl parabenといった抗菌性化学物質のアジュバント作用によるヒト免疫系への影響の検証については、同物質曝露が基本は経皮曝露であることから、皮膚曝露の多いoccupational fieldと性年齢がマッチングできるcontrolを設定し調査を開始した。
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今後の研究の推進方策 |
TRAF6cKOマウスを使用した解析は、Th2炎症を発症した後の老齢マウスを使った測定を実施しmicrobiomeの影響と全身炎症の関連、因果について検討する。methyl, ethyl, butyl, and propyl parabenといった抗菌性化学物質のアジュバント作用によるヒト免疫系への影響の可能性について動物実験での検証も検討する。化学物質経皮曝露コホートでは、尿中paraben濃度、IgE、感作の定量評価を実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
追加分のmicrobiome metagenome解析費用を計上する。methyl, ethyl, butyl, and propyl paraben等抗菌性化学物質のヒトアレルギー疾患や腸内細菌叢への影響評価疫学調査を完了させる。
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