研究課題/領域番号 |
16K19278
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研究機関 | 藤田保健衛生大学 |
研究代表者 |
李 媛英 藤田保健衛生大学, 医学部, 助教 (20701288)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | GIS / ウォーカビリティ / 公園 / 運動施設 / 運動習慣 / うつ / コホート研究 / 職域 |
研究実績の概要 |
先行課題によって、中部地域某広域自治体職員を対象としたベースライン調査が平成25年に実施されている。同調査で得られた自宅住所の情報はデータベース化されており、GISを用いて、いくつかの地理的情報が指標化されている。平成28年度には居住地近隣のウォーカビリティ指標に加えて、公園・緑地の数、運動施設の数、公共交通機関から自宅までの距離等の身体活動環境指標を作成した。そしてベースライン時の「余暇の散歩・早歩き習慣」、「余暇の運動習慣」、CES-D 11項目による「うつ症状」を被説明変数、近隣の環境指標をマクロレベルの説明変数、他の交絡因子をミクロレベルの説明変数とした横断的なマルチレベル分析を行った。その結果、自宅近隣のウォーカビリティと散歩・早歩き習慣が有意に関連した。具体的には、都市圏に居住する2,779(男性1,915、女性864)名の対象者うち、月1回以上散歩・早歩きする者(習慣あり)の人数は男性で1,115名、女性で457名であったが、ウォーカビリティが31-34、35-40の群は、ウォーカビリティが最も低い4-30に比し、散歩・早歩き習慣ありのオッズ比は男性において1.41(95% CI:1.12-1.78、P=0.004)、1.22 (0.98-1.53、P=0.07)、女性において1.43 (1.01-2.03、P=0.046)、1.18 (0.85-1.65、P=0.33)であった。この研究結果は国内の関連学会で発表した。 続いて、居住地近隣の身体活動環境とベースラインから3年後の運動習慣変化、うつ発症を縦断的に検討するため、平成25年調査の参加者のうち、平成28年(今年度)までに定年退職した者約700 名に対して生活習慣や心理状態ついての質問紙による追跡調査を行った。また、近隣環境の主観的な評価、客観的な評価、運動習慣やうつ状態三者の関連性を検討するため、質問紙により近所の交通機関や交通量、歩行に適した近隣環境かどうか、公園・緑地及び運動施設が整った近隣環境かどうかについて主観的に評価し、質問紙を回収した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
データ入力とデータベースの構築を順次進めてきている。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度には退職者を対象として実施した質問紙による追跡調査結果を入力、データベース化する。 続いて、近隣環境に対する主観的な評価とGISを用いた客観的な評価に相関性があるかを明らかにする。さらに、GISによる近隣環境指標とベースラインから3年後の運動習慣の変化との関連を分析する。また、ベースライン時にうつ症状がある者を除外した上で、GISによる近隣環境指標とうつ発症との関連を縦断的に分析する。近隣環境に対する主観的評価と3年後の運動習慣の有無、うつ症状(発症)との関連性を横断的に分析する。 平成30年度には統計解析も継続し、論文作成を行う。またしかるべき学会において発表する。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度退職者向けの調査で、対象者に謝礼を配布する予定であったが、研究計画を変更し配布をやめた。退職者向け調査も先行課題による別の目的の調査に同封して実施することができたため、通信費も節約できた。
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次年度使用額の使用計画 |
退職者だけでなく、在職中の職員も研究対象者として追加する。またベースライン時に保存された血液検体を活用して、バイオマーカーの測定も行うこととしている。
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