研究課題/領域番号 |
16K19282
|
研究機関 | 公益社団法人地域医療振興協会(地域医療研究所) |
研究代表者 |
野藤 悠 公益社団法人地域医療振興協会(地域医療研究所), ヘルスプロモーション研究センター, 研究員 (10626047)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 取組みのプロセス評価 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、兵庫県養父市で平成26年度より実施している「シルバー人材センターの会員(シルバー会員)が各行政区に出張しフレイル予防教室を運営する」という新たな介護予防施策の有効性を評価し、直面した課題やその解決策など実施に際するノウハウを見える化することにより、他地域にも応用可能なモデルを提案することである。初年度は、取組みの経過を把握するために、教室への参加状況、シルバー会員の活動状況、専門職が行った支援について、保健師が記録した活動報告などを基に平成26~27年度における実施状況をとりまとめた。また、直面した問題への対応策について保健師にヒアリングを行った。以下にその概要を示す。 1) 教室への参加状況:平成27年度末時点で教室の開設地区数は13、参加者数は365名(高齢者人口の約4%)であり、教室実施地区の高齢者人口に対する各地区の平均参加率は37.0%(14.8~66.7%)であった。 2) シルバー会員の活動状況: 1回の教室あたり約4名体制で教室を担当した。 3) 専門職が行った支援:全20回のうち、保健師が8回程度教室を訪問し、参加者やシルバー会員のモチベーションを高めたり、リーダー的住民を見つけ継続方法を共に探るなどの継続化に向けた支援を行った。また、区の役員に教室の趣旨を説明し、開催を促すなどの広報活動も行った。 4) 直面した課題と対応策の一例:教室運営をボランティアではなく仕事として位置づけることで「お金をもらっているのなら手際よく進めてほしい」など厳しい声があがることがあった。その際、保健師がシルバー会員に呼びかけて練習を行ったり、シルバー会員と参加者が教える・教えられる関係ではなく、皆で協力し合って健康づくりをしていこうという雰囲気をつくり出すなどの対応を行った。 3)4)については、ここでは一部を挙げたが、今後詳細を記述したノウハウ集を作成したい。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
フレイル予防の取組みは順調に進んでおり、平成28年度末時点で、開催地区数26、参加者数631名(概算値)に達している。また、26地区全てが全20回の教室後に自主継続化に成功しており、住民のみの力で自主的に週1回の活動を継続している。また、教室の担い手となるシルバー会員に関しては、養成研修を毎年開催しており、これまでに1~4期生が誕生し、各地で活躍している。シルバー人材センターにとっては、新たな会員の確保にもつながっている。 また、本研究の大きな柱である、平成29年度に実施予定の取組みの効果評価に関する調査(自記式郵送調査、インタビュー調査)の準備に関しても、調査項目や調査の実施方法に関して、市の担当者や関連機関とも協議を重ね、順調に進んでいる。 以上のことから、本研究は概ね順調に進展していると自己評価している。
|
今後の研究の推進方策 |
フレイル予防の取組みの推進という点では、平成28年度に実施した保健師へのヒアリングから、以下の課題が浮き彫りとなった。そこで、次年度は、行政やシルバー人材センター、地域住民等と協議を進めながら、浮き彫りとなった課題に対する対策を講じていきたい。 1) シルバー人材センターの力を借りてもなお,人材養成や教室の自主継続化には保健師の力が必要不可欠である。徒歩圏域毎に教室をつくるとなると150余りの教室数となり、保健師のエフォートがかなり大きくなる 2) 全20回の教室終了後に自主化に至った際に、活動を継続するために、シルバー人材センターと行政がどのようなタイミングでどのような支援をしていくか、ノウハウを構築する必要がある 3) どのようにシルバー人材センターの事業費を確保するか 4) 市の予算を投じているため、どの程度の効果があったのか、説明責任を果たす必要がある 取組みの効果評価については、平成24年7月に、兵庫県養父市在住の65歳以上の男女7287名を対象にベースライン調査を実施している(176項目からなる自記式質問紙を用いた悉皆調査,回収率91.8%)。本研究では平成29年7月に、前回と同様の方法でフォローアップ調査を実施し、教室参加の有無別に、フレイルの要因である運動・栄養・社会機能、および、簡易版虚弱指標得点の変化を評価する。さらに、ポピュレーションベースでフレイルのprevalenceの変化も評価する予定にしている。さらに、教室参加者およびシルバー会員を対象に、意識や行動がどのように変化したかについて、半構造化面接法によるフォーカスグループインタビューを行い、取組みの効果を定性的に分析することを予定している。
|