本研究は、地域医療資源の格差が実際に地域医療に与える影響を検証することを目的として実施してきた。 平成29年度までにかけて、解析対象疾病におけるDPCデータ抽出、二次医療圏ベースの地域医療資源情報の整備、解析用データベースを構築し、解析を進めてきた(当初想定していた病床機能報告制度データの精度が粗く、E-STATの公的統計情報を利用した検討に方針を変更している)。その結果、地域医療資源の格差と精神科領域における長期入院・計画外再入院との関係性が明らかとなった。一方、急性心筋梗塞患者の分析においては、地域医療資源と計画外再入院との有意な関連は確認できなかった。 平成30年度においては、がん領域の検討を進め、小児脳腫瘍摘出術と、地域医療資源との関連が深い集約化との関連を検討し、いわゆるvolume effectがあることが確認できた。なお、これらの解析結果について、学術成果公表のための執筆を行い、その大半が英語論文(査読有)として受理・公開されている。
以上の研究成果を通じて、大規模医療データと地域医療資源関連データを連結した定量的な評価により、地域医療資源の格差が地域医療へ少なからず影響を与えていることが示唆された(リスク調整後の死亡率、再入院率、長期入院等による評価)。換言すると、良質な医療の提供において、地域医療資源を考慮する必要性が示唆された。医療資源配置を検討する際に、エビデンスに基づいた質の向上と均てん化等を図るための有益な情報として活用され、より良い社会が実現することを期待する。
|