研究課題
近年、保健医療介護分野全体を通して、複数のデータの連結(リンケージ)の必要性が論じられている。データベースを患者個人レベルで突合できれば意味のある情報がつながり、データ解析の幅が格段に広がる。本研究では、がん診断10年後の生死を98~99%追跡する大阪府の地域がん登録データとDPCデータ(わが国独自の医事管理データの1種)を連結したデータベースを作成することにした。2016年度に大阪府内の5病院(すべて厚生労働省または大阪府指定のがん診療拠点病院)から、2017年度に36病院(同じくすべてがん診療拠点病院)から過去4~10年間のDPCデータ(様式lと入院・外来EFファイル)を提出していただいて、がん登録データとの間で患者個人レベルで連結し、データベースを構築した。連結データを使って以下のような解析をした。1) がん診療の実態把握、地域/施設間の均てん化の評価と格差に関連する要因の探索、2) がん患者の生存率を地域/施設間で公正に比較できるように、年齢や病期などの基本的な特性だけでなく、詳細な患者背景(がん以外の慢性疾患の有無、日常生活動作ADLのレベル、栄養状態等)をもリスク調整する、患者集団の標準化の手法開発、3)がん治療の内容と生存期間の因果関係を推論するリアルワールド研究。特に、臨床試験の実施が困難な患者集団(希少がん、高齢者、小児・思春期・若年成人、併存疾患を持つ患者等)の治療法のエビデンス探索や、各種診療ガイドラインで推奨された治療法の妥当性の検証、4)がん患者の社会的問題、がんサバイバー・緩和ケア・地域連携の議論に資する資料作成。
2: おおむね順調に進展している
研究協力病院の予想以上の協力を得て、データベースの構築が順調に進んでいる。また、データの利用・解析も順調に進んでいる。
様々な分野の専門家とのインタラクションを加速して、社会や診療現場に妥当で、かつ学術的にも重要な課題の研究遂行を強化する。国際的な視野も取り入れることによって、わが国のがん医療に内在する問題点を明らかにする。
(理由)研究成果を発表する学会が近隣府県で行われることが多かったため、旅費が予定より少なくなった。(使用計画)研究成果を発表するための学会参加や論文投稿に伴う支出が増加する。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 1件、 査読あり 6件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (7件)
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