研究課題
ABO式血液型は個人識別に重要な指標として法医学、犯罪鑑識において利用されている。我々はこれまでにABO遺伝子のエンハンサー領域を発見し、プロモーター領域やエンハンサー領域の遺伝子変異が血液型亜型の原因となることを示すとともに、関与する転写因子を複数同定してきた。この研究成果によりABO遺伝子はエピジェネティックな発現調節を多分に受けていることが判明し、従って細胞環境によりABO遺伝子の発現量が変化することが考えられてきた。これらの知見を背景に、今回我々は、赤白血病細胞K562や胃がん細胞KATOIIIにおいて、ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤(HDACi)による刺激でABO遺伝子の発現量及び抗原量が減少するか否かを調べた。その結果、リアルタイムPCR法及びレポーターアッセイによりHDACiがK562及びKATOIIIに対して濃度・時間依存的にABO遺伝子の発現を低下させることを示し、O型血球を用いた血液型転換法によりHDACiがKATOIIIにおいて酵素活性を低下させることを確認し、フローサイトメトリー法により血液型抗原量が減少することを明らかにした。なお、一部のHDACiは既に臨床医療において治療薬として用いられているが、これらによる刺激でもABO遺伝子の発現量及び抗原量が低下することが確認された。また、ChIPアッセイにより、HDACiがABO遺伝子のプロモータ領域にエピジェネティック変化を与えることが、ABO遺伝子の発現量及び抗原量の低下の原因であることが示唆された。以上の結果から、組織の血液型抗原量計測に基づく常用薬物の推測や時間的・空間的な異同識別等といった法医実務への応用が展開されうると共に、血液型不適合臓器移植時における拒絶反応の軽減などの臨床応用が考えられ、輸血・移植医療への貢献が期待される。
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