研究課題
研究最終年度では、初年度で構築した自動前処理装置「ATLAS-USIS」による液-液抽出法および除タンパク法の評価を引き続き行った。法医中毒学的に重要であるベンゾジアゼピン系睡眠薬、三・四環系向精神薬、および覚せい剤や危険ドラッグなどを含む麻薬類などの薬物を対象成分とした。研究初年度では自動前処理法を高速液体クロマトグラフィータンデム質量分析(LC/MS/MS)と組み合わせた一斉定量分析法を構築したが、法医中毒学分野において幅広い活用を目的とするため、最終年度では上記に加えて法医中毒学分野において汎用性の高いガスクロマトグラフィー質量分析(GC/MS)と組み合わせた迅速・簡便な血中薬毒物のスクリーニング法の構築を行った。その際、GC/MSでは生体試料中に存在する脂質等の夾雑ピークによって薬物同定が困難な場合があるため、ステロール系脂質除去ステップを自動前処理プロトコルに組み込み、薬物同定能の向上と分析装置への負担軽減を可能とした。一方で、法医学分野では血液や尿試料の採取が困難な場合、臓器を分析する必要が生じるため、最終年度では臓器試料を対象とした薬物スクリーニング法を構築した。しかし一般に臓器試料の前処理は血液や尿試料よりも煩雑であるため、臓器試料からの簡便かつ汎用性の高い前処理法および薬物スクリーニング法がまだ確立されていないため、本研究では肝臓試料を対象とした「ATLAS-USIS」による前処理および高速液体クロマトグラフィー四重極飛行時間型質量分析(LC/Q-TOFMS)を組み合わせた薬物スクリーニング法を構築した。さらに、ディスポーザブルチップでの分注・高速遠心・窒素乾固機能を備えた新型の自動前処理装置「ATLAS-X」を用いて上記の肝臓試料の前処理法を構築し、評価を行った。なお、最終年度で得られた成果の一部は、日本法医学会にて発表した。
すべて 2018 2017
すべて 学会発表 (5件) (うち国際学会 1件)