サリン誘導体化合物であるBIMP(bis-isopropyl methyl phosphateのBIMPの培養細胞への影響について、昨年度、ヒストンH3のユビキチン化の変動を確認していた。本年度は、その成果をもとに実験を進めた。BIMP添加時においてDNMT1、及びUSP7のクロマチンへの蓄積をウエスタンブロット法により確認した。さらにDNA複製部位への蓄積を確認した。さらにこれらの結果は、アセチルサリチル酸添加時に、阻害されることを確認した。以上のことから、USP7の活性の阻害がBIMPの毒性の一部であることが示唆された。さらに、有機リン剤のDFPではこれらの現象が見られないことを確認した。このことは、USP7の活性阻害作用が神経ガス特異的であることを示唆している。
また、BIMP曝露により細胞の形態変化が確認された。さらには細胞接着の増強が見られた。以上のことから細胞外マトリックスの構成因子に何らかの影響があるのではないかと考え、網羅的にその発言量を解析したところインテグリンの構成因子のmRNAの発現の上昇を認めた。さらにウエスタンブロッティング法でもその上昇を確認した。以上のことから、何らかのシグナルの上昇によりインテグリンα4の発現上昇を確認し、それにより、細胞接着の増強を誘導したのではないかということが示唆された。また、インテグリンβ3の局在の変化を確認した。以上のことから、BIMPがインテグリンに何らかの影響を及ぼしていることを示唆している。
さらにアセチルサリチル酸によりこれえらの現象が阻害されることを明らかにした。これはアセチルサリチル酸がBIMPないしサリンの治療薬として効果があるのではないかということを示唆している。
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