研究課題/領域番号 |
16K19297
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
古宮 淳一 高知大学, 教育研究部医療学系連携医学部門, 教授 (60363280)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 認知症高齢者 / 嗅覚 / 法医学 / 不慮の死亡事故 / 神経病理学 |
研究実績の概要 |
脳摘出からホルマリン固定、切り出しまでの方法は以下の手順に決定した。まず頭蓋内から嗅球を含む脳を丁寧に摘出した後、左右の嗅神経を丁寧に摘出し、左右それぞれ別の容器でホルマリン固定した。また、解剖時に大脳を観察した後、左大脳半球を前頭断してその一部をホルマリン固定した。ホルマリン固定後は、可能な限り一次嗅覚レベル、前交連レベル、乳頭体レベル、外側膝状体レベルで左大脳半球を切り出し、左右嗅神経と共にパラフィン包埋組織標本を作製した。包埋用カセットの大きさを考慮し、認知機能評価のための嗅覚系の脳観察部位は、嗅神経では嗅球および前嗅核、一次嗅覚野では梨状葉および嗅内野皮質、前交連レベルでは扁桃核、乳頭体レベルでは海馬、外側膝状体レベルでは海馬と決定した。目的の脳部位が適切に切り出せるように、脳切り出しの厚さを適宜変更可能にできる切り出し器具を作製した。なお、解剖実務上の時間的制限や、免疫染色を実施することを考慮し、ホルマリン固定液は20%中性緩衝ホルマリン液を使用することとし、固定期間は2週間程度行うこととした。 各染色については、ガリアス染色の染色手順は決定できた。その他、抗リン酸化α-synuclein抗体、抗タウ蛋白抗体などを用いた免疫染色手順については未だ決定できおらず、現在検討中である。 平成28年1月から12月の間に法医解剖を行った65歳以上の高齢者39例のうち、少なくとも嗅神経が採取できた症例は9例であったが、一次嗅覚レベル、前交連レベル、乳頭体レベル、外側膝状体レベルの全ての脳切片が作製できた症例はなかった。この問題を解決するために、脳切り出しの厚さを適宜変更可能にできる切り出し器具を作製し、現在適切な固定脳の切り出しが実施できている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画では平成28年度中に、ガリアス染色および免疫染色の方法や手順を検討し決定する予定であったが、現時点でガリアス染色のみ手順が決定している状況である。このため、各種染色を用いた嗅覚系の神経病理学的所見に基づく認知機能評価が未だ実施できていない状況である。
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今後の研究の推進方策 |
今後は免疫染色の方法や手順を可能な限り速やかに決定し、対象例の各脳切片についてHE染色、ガリアス染色および免疫染色を実施する。その後、嗅覚系の部位について、過去の文献に従って認知機能の評価を行う。また、各剖検例の記録から得られた不慮の死亡事故に関する情報と、染色の結果得られた認知機能評価との関係について検討する。 研究の進捗状況がやや遅れている状況であることを考慮し、当初予定していたガリアス染色および3つの一次抗体(抗タウ蛋白抗体、抗リン酸化α-synuclein抗体、抗β-amyloid precursor protein抗体)を用いた免疫染色による認知機能評価から、ガリアス染色および2つの一次抗体(抗タウ蛋白抗体、抗リン酸化α-synuclein抗体)用いた免疫染色による認知機能評価に変更する。抗β-amyloid precursor protein抗体による免疫染色の評価はガリアス染色および2つの一次抗体(抗タウ蛋白抗体、抗リン酸化α-synuclein抗体)用いた免疫染色による評価で十分に代替可能であると考える。
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