研究課題/領域番号 |
16K19301
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
落合 恵理子 東海大学, 医学部, 奨励研究員 (60760270)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 混合試料 / ミトコンドリアDNA / 次世代シーケンス |
研究実績の概要 |
犯罪現場の遺留物などからDNA鑑定を行う際に、複数人分のDNAが検出される場合がある。これを混合試料と呼び、何名分のDNAが混入しているか、またDNA型の由来が誰であるかを特定することは現状では難しい。また、遺留物に存在するDNAは極微量であったり分解が進んでいることがあり、核DNAでの分析が困難となる場合がある。そこで、本研究では次世代シーケンサーを用いて混合試料におけるミトコンドリアDNA(mtDNA)解析を行い、検出されたDNA鎖(リード)毎の塩基配列の違いを比較することで複数人のDNA型を分離することを試みた。 2人分のDNAを1:1の割合で混合し、混合試料モデルを作成した。10 ngの混合DNAを用いて、mtDNA中の高度な多型性を持つhypervariable region(HV)1とHV2を含む各380 bp程度の領域をマルチプレックスPCRで増幅した。100 ngの増幅産物を用い、Ion Plus Fragment Library Kit(Thermo Fisher Scientific)でライブラリを作成した。400 bpリードのプロトコルに従い、次世代シーケンサーIon PGMで塩基配列データを取得した。 mtDNAのrCRSを対象配列として変異解析を行った結果、混合試料中に含まれる2人分のSNPをすべて検出することができた。また、Integrative Genomics Viewerでリードの可視化を行ったところ、HV2においては(73-131-204-207-263)と(73-150-263)の多型が別々のリード上に表示され、2人分のハプロタイプとして分離することが可能であった。HV1では、同様に2人分の多型が異なるリード上にあることを確認できたが、Cの連続配列付近でカバレッジが減り全領域を1本のリードで読むことが難しく、手法の改良が必要と考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
混合試料中のミトコンドリアDNAの配列解析の結果、HV2領域では2人分のハプロタイプを分離することができたが、HV1領域では連続配列の付近でカバレッジが減り、十分なリード長を得ることができなかった。また、連続配列のindelの検出も困難であった。 本研究では400 bp程度の増幅産物を用いてシーケンスを行っているが、実際にシーケンスで読まれたリード長のピークは300 bp程度と短く、ターゲットの一部しか読まれていない可能性がある。得られたリード数も予想より少なく、元の増幅産物のサイズが大きすぎて検出できていない可能性も考えられる。 解析手法の確立のため、プライマーを再設計して増幅範囲を小さくするなどの検討が必要であり、次の研究段階に進むにはもう少し時間がかかる。
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今後の研究の推進方策 |
1.解析手法の確立 プライマーの再設計などの検討を加え、十分なリードの長さをもってHV1・HV2領域が検出できるようシーケンスの手法を確立する。 2.分析限界となるDNA量の検討 2人分のDNAの混合比を変更していき、両者のDNA型が検出可能な限界比率を探る。また、微量DNA試料の分析に向けて、最初のPCR増幅に用いるDNA量を減らしていき、分析限界の検討を行う。 3.実際の遺留物または微量DNA試料モデルからの分析 現場等で実際に採取された遺留物を用いて分析を行う。遺留物が手に入らなかった場合は、複数人が使用したコップや爪切り、また複数人に紙面や布を触ってもらい作成したTouchサンプルなどをモデル試料として準備し、DNAを抽出しミトコンドリアDNA分析を行う。3人以上の混合DNAからの分析も検討していきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
解析手法の確立に時間がかかり、その後行う予定であった各種検討まで至らなかったため、シーケンスに用いる予定であった金額が次年度使用分となった。
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次年度使用額の使用計画 |
次世代シーケンスに用いる消耗品に使用する予定である。
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