研究課題/領域番号 |
16K19304
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
高橋 昌宏 東北大学, 加齢医学研究所, 助教 (70637173)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 高齢者 / 高齢者機能評価 / スクリーニングツール / がん / SNPアレイ |
研究実績の概要 |
本研究では70歳以上の高齢がん患者を対象とし、G8(Geriatirc 8)とfTRST(Flemish version of the Triage Risk Screening Tool)という2つの高齢者機能評価スクリーニングツールを用いた評価を行った。fTRSTについてはわが国で使用可能な日本語版がなかったため、研究代表者を含めた2名の研究者が日本語訳を行い、バックトランスレーションをしてfTRSTを開発した海外の研究者から承認を得る形で研究に用いることができた。これまでに400名以上の患者でG8、fTRSTによる評価を行い、本研究の目的の1つである高齢がん患者が抱える問題点を明らかにすることができた。具体的には移動能力、栄養状態、処方薬数、自身の健康状態に対する評価の点で問題点を有する割合が高かった。 また、本研究では高齢がん患者において最適な治療法を選択するにあたり、高齢者機能評価が有用なツールであるかどうかを明らかにすることを目的としている。G8スコアによって高齢がん患者を3つのグループに分類した場合、スコアが低い患者ほど全生存期間が短いことを明らかとした。さらに、がん領域で一般的に使用されている身体機能を評価するツールであるperformance status(PS)とG8ツールを組み合わせることで、PS単独よりも予後予測因子として有用であることを示した。この結果により、G8ツールを評価することで高齢がん患者の治療法選択に役立つことが示唆された。 SNPアレイについては検体収集を進めているところであり、今後、順次解析を行っていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究は70歳以上の高齢がん患者を対象としているが、SNPアレイ解析に必要な血液検体収集が遅れている。研究代表者が所属する東北大学病院では、平成29年度に個別化医療センターバイオバンク部門が設立され、患者からの検体を収集、管理するシステムが構築された。本研究もこのバイオバンク事業の一環として血液検体を収集することが適切であると判断したため、当初の予定よりも検体収集開始が遅れた。しかし、すでにバイオバンク事業は開始され、本研究で使用できる検体の収集も開始できている。 血液検体収集開始は遅れたものの、高齢者機能評価スクリーニングツールであるG8とfTRSTを評価した症例数は400例を超え、順調に集積されている。G8と全生存期間との関連については、研究代表者が筆頭著者として論文で報告した(Takahashi M, et al. PLoS One 2017;12:e0179694)。高齢者機能評価と化学療法の効果予測、副作用発現予測については現在解析中であり、学術集会における発表、論文としての発表を準備中である。
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今後の研究の推進方策 |
今後はさらに症例集積を加速させ、高齢者機能評価、化学療法の効果予測および副作用発現予測、SNPアレイとの関連について解析を進めていく。また、血液検体収集が遅れている状況を改善するため、多施設共同臨床試験である「フッ化ピリミジンを含む化学療法に不応の高齢者治癒切除不能進行・再発大腸癌患者に対するトリフルリジン・チピラシル塩酸塩療法の第Ⅱ相臨床試験(T-CORE1401)」および「高齢者切除不能進行・再発胃癌を対象としたRamucirumab+paclitaxel併用療法の第II相臨床試験(T-CORE1501)」に登録した患者においても本研究が合致する部分の解析を進めていく。具体的には、臨床試験登録患者から採取した血液検体を用いてSNPアレイ解析を行い、高齢者機能評価および治療効果、副作用との関連についてのデータを蓄積していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由) 本研究で計画していた血液検体採取は、研究代表者が所属する東北大学病院での個別化医療センターバイオバンク事業として行ったほうがよいという判断となった。平成29年度末にバイオバンク事業が開始されたことから、血液検体収集が遅れ、結果的にSNPアレイ解析が遅れたことから次年度使用額が生じた。 (使用計画) 平成29年度末から血液検体の収集が開始できたことで、今後、順次SNPアレイ解析を進めていく。また、本研究で得られた知見を国際学会で発表し、論文としても発表する予定である。
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