本研究の目的の1つは、高齢がん患者が抱える問題点を明らかにすることである。これまでに、500名を超える70歳以上の高齢がん患者において、Geriatirc 8(G8)とFlemish version of the Triage Risk Screening Tool(fTRST)という2つの高齢者機能評価スクリーニングツールを用いた評価を行った。その結果、移動能力、食事量、体重減少、処方薬数、直近の入院、自身の健康状態に対する評価の点で問題点を有する割合が高かった。 切除不能・進行再発消化器癌を有する消化器癌患者において、G8スコアは化学療法の治療継続期間および全生存期間と有意に関連することを示した。また、2サイクル目以降の抗がん薬減量の有無とも関連することを明らかにし、G8は高齢がん患者に最適な治療を提供するための有用なツールの1つとなることが示唆された。 多施設共同臨床試験である「フッ化ピリミジンを含む化学療法に不応の高齢者治癒切除不能進行・再発大腸癌患者に対するトリフルリジン・チピラシル塩酸塩療法の第Ⅱ相臨床試験(T-CORE1401)」および「高齢者切除不能進行・再発胃癌を対象としたRamucirumab+paclitaxel併用療法の第II相臨床試験(T-CORE1501)」に登録された患者において高齢者機能評価を行い、治療効果および副作用との関連を解析中である。さらに、この2試験では付随研究として血液検体を採取しており、ジャポニカアレイを用いた一塩基多型(Single Nucleotide Poplymorphism:SNP)アレイを行った。今後、SNPアレイのデータと高齢者機能評価、治療効果、副作用との関連について解析を進めていく予定である。
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