研究実績の概要 |
近年社会問題となっている概日リズム睡眠障害は体内時計の周期長の個人差が原因の一つとなっている. 例えば, 家族性睡眠相前進症候群(FASPS)では, 体内時計の周期が短くなることで極端な朝型になるが, 本疾患の体内時計の周期短縮を<I>in vitro</I>で再現に成功した報告は存在しなかった. 本研究では, まずマウスES細胞のゲノム改変と分化誘導, そしてリアルタイム生細胞発光モニタリングを用いた実験系の開発に成功し, FASPSの周期短縮を世界で初めて細胞レベルで再現する事に成功した. また, 本実験系は汎用性が高いことが示され, 昼夜逆転発症の分子メカニズムの一端の解明にもつなげることができた (Tamiya Sci Rep 2016, Nature Japan おすすめのコンテンツ, ISSCR (国際幹細胞学会) Merit Award, Travel Award, 日本時間生物学会優秀ポスター賞). さらに, 本実験系は組織分化やヒトiPS細胞への応用も可能なことから, 体内時計作動薬・睡眠障害治療薬のテイラーメイド探索への応用が期待される. また, 薬剤探索では, 代表者らが行った臨床ビッグデータ研究 (Tamiya, PLoS ONE 2015)で時間調節作用が予想された4種類の漢方薬につき, ヒト培養細胞を用いて釣藤散に時計作用があることを同定した. さらに構成9方剤の中から時計作用のある方剤を同定した.また, 薬学部との共同研究において, 方剤の酢酸エチル分画に作用成分があることを同定し, さらにクロマトグラフィーを用いたActivity guided separationを繰り返し行うことで, 2種類のセスキテルペンを同定した. これらの薬剤の効能の個人差の評価には, 先述のiPS細胞を用いた分化誘導系が有効と考えられる. 以上のようにリアルタイム生細胞発光モニタリングを用いた体内時計作動薬のテイラーメイド探索の基盤技術の開発と, その候補薬の同定に成功した.
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