研究課題/領域番号 |
16K19317
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研究機関 | 札幌医科大学 |
研究代表者 |
中野 正子 札幌医科大学, 医学部, 助教 (20709646)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 豊かな環境 / アストロサイト / 骨髄間葉系幹細胞 / エクソソーム |
研究実績の概要 |
平成28年度の糖尿病モデルマウスでの検討はほぼ終了し、平成29年度および平成30年度の計画を一部前倒しして行っている。糖尿病モデルマウスでの検討では、豊かな環境下での飼育によって糖尿病による学習記憶障害が抑制されること、またその機序として内在性骨髄由来間葉系幹細胞から分泌されるエクソソームが関与することが明らかとなった(論文投稿中)。さらに、エクソソームにはmicro RNA 146aが含まれることが分かり、この因子が脳のアストロサイトの炎症を改善したと考えられた。 平成29年度に予定していたアルツハイマー病モデルマウスでの検討も一部進んでいる。アルツハイマー病モデルマウスにおいても、豊かな環境で飼育すると学習記憶機能が保たれることを見出し、またアストロサイトの炎症反応が改善していることが明らかとなった。 平成30年度に予定していたヒト献体脳での検討も一部進んでいる。献体された方の脳を調べたところ、アルツハイマー病の原因物質であるアミロイドβやリン酸化タウが蓄積しても、生前認知症が見られなかった症例が比較的多いことが分かった。このような症例では、アストロサイトの機能が維持されていること、またニューロンの数が保たれていることが明らかとなった。 以上から、認知機能とアストロサイトの機能が相関する可能性、また生活環境・社会的活動が認知機能に影響を与える可能性が示唆された。さらにこれらの研究を進めることで、認知症のよりよい予防法や治療法に結びつけることができると思われる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度の計画はほぼ終了し、平成29年度および平成30年度の計画を一部開始している。具体的には、糖尿病モデルマウスを豊かな環境で飼育すると学習記憶障害が抑制され、骨髄由来間葉系幹細胞から分泌されるエクソソームがその作用機序に関与することが明らかとなった。またアルツハイマー病モデルマウスも豊かな環境で飼育すると学習記憶機能が保たれることが分かり、ヒト献体脳の形態学的解析も進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
アルツハイマー病モデルマウスの検討では、豊かな環境が骨髄間葉系幹細胞に及ぼす影響、さらに骨髄間葉系幹細胞から分泌されるエクソソームが学習記憶機能に及ぼす影響を解析する。 ヒト献体脳についての検討では、引き続き、①脳組織解析(アルツハイマー病理の有無の検索、ニューロン・アストロサイトの免疫組織学的検討)と、②献体者の生前の生活背景・認知機能の調査を行う。②においては、遺族に同意の上アンケートに回答していただき、「病歴」「教育歴」「生活自立度」「社会活動」「認知機能」等の評価を行う。さらに脳病理と、生前の生活背景・認知機能を比較検討し、認知症を抑制する因子を検索する。
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次年度使用額が生じた理由 |
物品を安価で購入することができ、当初の予定額内で十分に研究を遂行することができた。また進捗状況も良好(平成28年度の計画はほぼ終了し、平成29年度および平成30年度の計画を一部開始している)である。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度および平成30年度の計画を引き続き遂行するために、助成金を使用する。 具体的には、アルツハイマー病モデルマウスの検討において、動物・細胞培養試薬・PCR関連試薬等に使用する。ヒト献体脳での検討では、免疫組織炎症関連試薬等に使用する。
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