研究実績の概要 |
高齢化社会が進む現在において、高齢心疾患患者は増加の一途をたどっている。高齢心不全患者への対応は、従来の心不全予後を規定する新機能や神経液性因子以外にも、高齢者特有の虚弱の病態が大きく関与する可能性があるが、それらの因果関係は不明な点が多い。本研究では、まず高齢心不全患者の身体的・精神認知的虚弱状態の関与を評価するために、骨格筋や脳の状態、神経液性因子の面から検討し、高齢者に特化した心不全評価を確立する。さらに、運動療法による虚弱への介入を行うことで、多元的な要因にて規定される高齢心不全患者の予後改善のための運動療法の意義・方法を確立する。 本研究では当院へ心不全で入院した患者計73名を登録した。うち頭部MRIを実施できた患者は25名であった。患者ごとの事情により通院型心臓リハビリテーションに通えない者が多く、非監視型運動療法に切り替えたが、当院外来まで通院できる者は少なかったこと、研究の遅延があったことから、報告書作成時までに外来にてフォローアップできた者は3名にとどまった。 頭部MRIを実施できた患者のうち、24時間血圧測定および認知機能検査が実施できていた患者19名に対して血圧日内変動と頭部MRIでの深部白質病変容積について検討したところ、夜間血圧が十分低下しないNon-dipper型の血圧変動群において、夜間収縮期血圧(120mmHg vs 100mmHg, p=0.02)、夜間拡張期血圧(74mmHg vs 62mmHg, p<0.01)が有意に高値であり、頭部MRI所見では、全脳容積に占める深部白質病変容積の割合がNon-dipper群で有意に高値であった(0.97% vs 0.32%, p=0.045)。
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