本研究では、退院後の高齢者ポリファーマシー再発を予防するため、円滑なケア移行の実行に必要な退院時薬剤情報提供フォーマットを開発することを目的としている。この目的を達成するため、(1)急性期病院退院後の高齢者ポリファーマシー再発率を明らかにする、(2)退院後のポリファーマシー再発に関与する要因を明らかにする、(3)高齢者ポリファーマシー再発を予防する退院時薬剤情報提供フォーマットを作成する、の3項目を研究期間内に明らかにすることを当初目標とした。 令和元年度は、すでにKJ法を用いて収集してある(3)の退院時薬剤情報提供フォーマット作成に係る基礎データであるテキストデータを、前年度に引き続いてカテゴリ分類し概念化を行った。その結果、通常の診療で作成される患者の診断および治療経過に関する情報提供書記載内容に加えて、薬剤に関する情報提供フォーマットに必要な項目として抽出された概念は、①薬剤情報、②処方と減処方のエビデンス、③処方変更後の経過、④服薬アドヒアランス、⑤薬剤に対する患者の思い、であった。また、フォーマットを作成する際にはこれらを表として提示し、必要に応じてチェックボックスを使用するという、臨床に従事する医療従事者の実践知からの活用法も示された。 しかしながら、(1)と(2)に係る、急性期病院退院後の高齢者ポリファーマシー再発率、ならびに再発に係る因子抽出のための対象患者に対する質問紙調査は、調査対象者からの回答を確実に得ることが困難なため実施には至らなかった。
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