研究実績の概要 |
平成28年度は「漢方薬投与における意欲的行動評価系」を確立し,漢方薬介入による意欲的行動の変化を6ヶ月以上にわたる長期間評価することに成功した。さらに,野生型マウスの普通餌群と抑肝散加陳皮半夏群とにこの「漢方薬投与における意欲的行動評価系」を用い,抑肝散加陳皮半夏は野生型マウスに対しては意欲増加を示さない事を明らかにした。 平成29年度は前年の実験データの解析から,抑肝散加陳皮半夏が食欲を増加させることなく有意に野生型マウスの体重を増加させることを明らかにした(Hamaguchi et al., Nagoya J Med Sci. 2017; 79: 351-362)。アルツハイマー型認知症患者では体重減少が一つの問題となるが,抑肝散加陳皮半夏はその改善に有効である可能性が考えられた。 平成30年度は意欲低下モデルマウスへの漢方薬介入のため,アルツハイマー病モデルマウスであるApp NL-G-F/NL-G-F mouse (Saito et al., Nat. Neurosci. 2014)を用いた研究を行った。このモデルマウスに「漢方薬投与における意欲的行動評価系」を用いて39週齢まで意欲評価を行った結果,意欲が一部のマウスで低下していることを発見した。この意欲低下の原因を病理組織学的変化に求め,各個体ごとにアミロイド斑に関して意欲に関連する5つの脳領域で画像解析を行った。結果,アミロイド斑でもより毒性の高いコア(芯)を持つアミロイド斑が線条体に多く沈着していると,意欲が低下することが示された。この結果は現在論文投稿中である(Hamaguchi et al., Neurochemistry International. 2019. In revision)。
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