研究課題
日本におけるインフルエンザ診療は、1999年にイムノクロマト法を用いたインフルエンザ迅速診断キット(Rapid influenza diagnostic tests; RIDTs)が導入され、2001年に抗インフルエンザ薬であるノイラミニダーゼ阻害薬が導入されて以来、症状のみで診断し、安静療養しか方法がなかった従来の方法とは大きく変わった。インフルエンザウイルスを検出することは不必要な検査や不必要な抗菌薬投与を減らし、インフルエンザ感染予防や感染コントロールに役立つ。しかし、RIDTsは特異度は高いが、感度は低いことが知られており、RIDTsの感度を下げる最大の要因は、発症から12時間以内という早すぎる段階での検査と言われている。逆に、特異度は高く、インフルエンザ流行期の除外診断には有用であり、インフルエンザを除外することで診断プロセスが一歩進むような使い方は望ましい。インフルエンザの確定診断のためにRIDTsを行うのであれば、流行状況や病歴、身体所見から検査前確率はどの程度なのかを外来医師が推測し、不必要な場合は施行を控えるべきである。このため、医師のインフルエンザ診断力もRIDTsがたとえ簡単に行える環境下であっても大切な役割を果たすと考えた。我々は、医師の臨床診断の診断特性を明らかにし、またインフルエンザに特徴的な症状からインフルエンザ診断のためのスコアリングシステムを構築すべく、本研究を行った。結果、インフルエンザの症状に特異的な症状は他の発熱性呼吸器疾患と比較し明確なものはなく、スコアリングシステム構築は困難であった。一方、医師の診断特性は感度93.3%、特異度60%と感度が高く、特異度は低いという結果であった。流行状態や病歴、接触歴、身体所見から診断する医師の臨床診断は十分尊重されるべきで、感度が低く特異度の高いRIDTsと相補的な役割を十分果たすと考えられた。
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BMJ Open
巻: 9 ページ: e032059
10.1136/bmjopen-2019-032059