研究課題
本研究は,代表的な消化器心身症である過敏性腸症候群(IBS)の患者を対象として,心理的ストレス状況下における携帯情報端末を用いたリアルタイムでのストレス認知や行動の修正を意図した認知行動療法の適用が,どの程度症状低減効果を有するのか,ということについて検討することを目的としている。 平成30年度は,平成29年度までに行われた介入研究を完了させた。介入までの経過としては,まず平成28年度に行った診断基準(RomeIV)の再検討に基づき自己記入式質問紙などの調査材料の再整備を行った。その背景は,2016年5月に 開かれた米国消化器病週間(DDW)にて新しい診断基準が正式に刊行され,それに基づいた新たな質問紙作成の必要性が生じたことにある。尺度の再検討のためのパイロットスタディの結果,診断基準の違いによる抽出精度の差は許容できる範囲であり,本研究の前提となっている先行研究を基盤にした介入計画は,一定の妥当性を備えていることが確認された。 次に,診断基準に基づきスクリーニングを行い,IBS患者を抽出した。除外基準に該当しない対象者に対して,個別のインフォームドコンセントの手続きの 後,介入プログラムの効果検討を行った。その結果,介入群は対照群に比して,有意にIBS症状が改善し,疾患特異的QOLが向上していた。また,介入ターゲットである認知的評価やストレスコーピング尺度の得点の有意な変化から,心理・行動的適応度が向上していることが推測された。現段階では,予定されている対象者数の介入とフォローアップが終了している。
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明星大学心理学研究紀要
巻: 37 ページ: 25-32