研究課題/領域番号 |
16K19325
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研究機関 | 旭川医科大学 |
研究代表者 |
長谷部 拓夢 旭川医科大学, 大学病院, 医員 (10596282)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 脂肪肝 / 鉄過剰 / ヘプシジン / BMPER |
研究実績の概要 |
NAFLDの鉄代謝恒常性破綻を確認するため、高脂肪食摂餌により脂肪肝を誘導したモデルマウスを用いて、マウス体内で鉄過剰状態を認めることを確認した。また、長期間の高脂肪食負荷を行うことで、肝内鉄沈着や肝組織中の線維化も進行し、脂肪肝からNASHに進展することを示した。これらのことにより、ウイルス性肝炎やアルコール性肝炎などのような明らかな肝炎を来す要因がなくても、長期間の脂肪肝の持続のみによって肝線維化進展が起こることを見出した。 脂肪肝マウスにおける鉄代謝恒常性破綻のメカニズムについて、プレリミナリデータとして得ていたヘプシジンの発現低下とBMP-SMADシグナルの関連に着目し、脂肪肝マウスモデルの肝組織を用いて遺伝子発現解析を行った。その結果、脂肪肝マウスの肝組織においてBMPシグナルを抑制するBMPERの発現亢進があることがわかった。脂肪肝マウスにおける鉄過剰は、BMP-SMADシグナル抑制に伴うヘプシジン産生低下にあることを指摘し、脂肪肝マウスの鉄過剰にBMPER発現亢進に伴うHepcidin産生抑制が関係していると見出した。肝組織中でも初代培養肝細胞および初代培養類洞内皮細胞を採取することによって、特に類洞内皮細胞から産生されるBMPERがBMP6と結合することで、ヘプシジン産生を抑制することも見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績に基づき、英文論文を1編公表している。さらに、当初の計画に基づき他の因子についても現在解析を進めているところである。細胞間連関についても、肝組織内の初代培養細胞を採取することによって一部検討が行えている。しかし、細胞連関については他臓器から肝細胞が調節を受ける可能性も考えられ、さらなる検討が必要である。 マウスモデルの評価では、現在高脂肪食摂餌による脂肪肝マウスの検討にとどまっており、遺伝的過食マウスでの検討は十分には行えていない。さらに、他臓器との関係性についても今後検討が必要な部分であり、脂肪肝の病態進展と他臓器との連関を検討していく必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
現在高脂肪食摂餌による脂肪肝モデルの検討がされているため、さらに遺伝的過食マウスについても遺伝子発現解析などを行っていく。これにより得られたデータと脂肪肝の病態進展に関して今までに得たデータとの相違を検討し、pre-NASHの病態に関わる因子の探索を行う。 NAFLDの病態進展に鉄過剰以外にも腸内細菌叢の変動や筋力低下など他臓器が関連していることが報告されており、同様の高脂肪食摂餌モデルなどを用いることで、肝臓の病態進展と他臓器との連関、特に腸管や筋肉についての検討を進めていく。さらに、他臓器との関連については初代培養肝細胞を用いることで、他臓器細胞との共培養などによりその細胞間連関の検討も進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
使用した試薬およびマウス飼料の値引きにより、想定していたよりも安価に試薬・飼料が手に入ったため、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
研究計画に基づき、遺伝子発現解析や蛋白発現解析に使用する試薬に対して、次年度使用額を使用していく。
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