研究課題/領域番号 |
16K19326
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研究機関 | 旭川医科大学 |
研究代表者 |
粂井 志麻 旭川医科大学, 大学病院, 医員 (00548969)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 内臓痛覚過敏 |
研究実績の概要 |
近年、過敏性腸症候群(IBS)は腸管粘膜の微小炎症持続や腸内細菌叢の構成変化dysbiosisが病態に大きく関与する可能性が指摘されている。本研究ではプロスタグランジン(PG)I2が腸管粘膜の微小炎症や腸内細菌叢の恒常性の維持に関与し、そのシグナルの制御がIBSの治療へ結びつくのではないかとの仮説を立て、これを検証することを目的にした。まず、精神的ストレスより生じる内臓痛覚過敏モデルにおけるプロスタグランジンI2受容体IP作動薬の効果を検証した。内臓痛覚過敏は、ボールマンケージ内に留置した意識下ラットに対し直腸にバルーンを挿入し伸展刺激を加え、伸展痛を腹直筋に挿入した筋電極により導出した。ストレスを背景としたIBSモデルとして早期母仔分離モデル(Maternal Separation(MS)、精神的ストレス負荷するWater avoidance stress(WAS)負荷モデルを用いた。これらの系のラットを用いてIP作動薬を投与し、内臓痛覚過敏を効果判定の基準としIBS治療薬としての可能性を検討した。 1)MSモデル:生後2日目~14日目まで3時間連日母仔分離を行ったMS群では、コントロール群に比べ8週目の大腸伸展刺激における内臓痛覚閾値が有意に低下した。また、離乳食開始時期と同時にIP作動薬を連日投与するとMS群では内臓痛覚過敏がコントロールレベルまで改善した。 2)WASモデル:連続した3日間をWAS負荷モデルでは、最後の負荷より24時間後においてWAS群がコントロール群に比べ有意に内臓痛覚閾値が低下した。続いて、WAS負荷直前にIP作動薬を投与した群では、内臓痛覚閾値のを認めなかった。 以上より、精神的ストレスを背景とし生じるIBSモデルにおいてIP作動薬は、内臓痛覚閾値の低下を予防することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
IP作動薬がIBSモデルの内臓知覚に効果を有することが明らかとなったが、そのメカニズムの解明に関してはまだ着手できていない。
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今後の研究の推進方策 |
今後、消化管における炎症性サイトカイン・ケモカインの測定や腸内細菌叢の解析を行いIP作動薬のIBSにおける作用起点を解明する。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験が遅れたため実験に必要な消耗品などの物品費が余った。
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次年度使用額の使用計画 |
当初の予定通り、腸内細菌叢の解析、炎症性サイトカインの測定を行う。
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