研究実績の概要 |
前年度の研究では、IP作動薬がストレス負荷により生じる内臓痛覚過敏を是正することを明らかにした。本年度は、ストレス負荷の中でも、早期母仔分離(maternal separation: MS)モデルに着目し実験を行った。生後2日目~14日目に至るまで毎日3時間母親から分離した仔(MS群)とその対照群(non handled 群:NH群)の糞便中の腸内細菌をTerminal Restriction Fragment Length Polymorphism法にて比較した。 MS群では、NH群に比べ、Clostridium cluster XⅧ群の割合が顕著に上昇していた。 次に、MS群にIP作動薬を投与するとClostridium clusterXⅧが減少し、Clostridium cluster XI、Clostridium sbuclusterXⅣaが占める割合が有意に上昇した。このことから、IP作動薬によりMS群の腸内細菌を変化させることを明らかとした。 また、大腸粘膜におけるプロスタグランジンI2産生に関与する遺伝子(cyclooxygenase;cox-1,COX-2,PGI2 synthase,IP)や当初変化すると予想していた炎症や腸内細菌の恒常性の維持にかかわるインフラマソーム関連遺伝子(NLRP3、NLRP6)などの発現変化は、NH群NS、NH群BPS、MS群NS、MS群BPSの4群においていずれも有意な差を認めなかった。 MSモデルは、うつ病モデルとしても知られている。MS群では、高架式十字路迷路試験や強制水泳試験で不安や鬱様行動を認めたが、IP作動薬の投与によりこれらの行動が改善する傾向も認め興味深い知見を得られた。
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