研究課題
本研究は、微小環境を考慮した胆道癌初期浸潤病巣の解析を行うことで、早期胆道癌の病態解析に繋げ、胆道癌における新たな癌増殖制御機構の構築を目指すものである。胆道癌の微小環境特性としては、初期浸潤病巣においても癌細胞周囲に線維化が生じ、脈管侵襲や神経周囲浸潤が顕著になることが挙げられる。癌細胞と周囲の間質の相互作用を含む微小環境が癌の悪性度に重要な役割を果たしている。これらの相互作用は概日リズムを形成する時計遺伝子 (bHLH (Basic-helix-loophelix) 型転写因子)を基盤に形成されるいう仮説に基づき、時計遺伝子の発現と癌細胞増殖、癌細胞・間質との相互作用の機序を証明することにより、胆道癌初期浸潤病巣における癌微小環境の病態解明と増殖制御機構の構築を目標としている。時計遺伝子DEC1, DEC2は全身のあらゆる臓器で発現しており、日内リズムや免疫、癌化、低酸素応答、アポトーシス、組織文化の制御など多彩な働きを有していることが知られつつある。今回、胆道癌細胞とヒト間葉系幹細胞を共培養し、癌細胞の形態変化、免疫組織化学染色の結果において、癌細胞に上皮間葉系転換 (EMT) が生じることを明らかにしている。さらに。この微小環境下において癌細胞の DEC1 の発現が上昇することが明らかにされた。これらの結果を総括すると、DEC1 が癌微小環境形成において重要な働きを担っていることが示唆された。
3: やや遅れている
胆道癌初期浸潤病巣における微小環境形成は、時計遺伝子機能が基盤として形成されることを証明するため、時計遺伝子発現による癌微小環境の解明を試みている。ヒト癌細胞において、時計遺伝子と上皮間葉転換(EMT)の関係を調べることができたものの、胆道癌の癌幹細胞の特性をMTS assay などで検討するには至れなかった。
今後も引き続き、癌の微小環境と概日リズム、間葉系肝細胞の癌関連線維芽細胞への分化誘導を行う実験を継続し、胆道癌細胞と癌関連線維芽細胞との共培養系での実験を行う。それらを通し、癌微小環境が癌幹細胞に及ぼす影響を検討する。
すべて 2016
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 4件)
Oncol Rep,
巻: 36 ページ: 3154-3160
10.3892/or.2016.5202.
Oncol Rep.
巻: 36 ページ: 1251-1257
10.3892/or.2016.4932.
Biomed Res.
巻: 37 ページ: 774-784
10.2220/biomedres.37.77.
巻: 36 ページ: 2592-2598
10.3892/or.2016.4635.