研究課題/領域番号 |
16K19328
|
研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
羽賀 敏博 弘前大学, 医学研究科, 助教 (80771625)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 早期胆道癌 / 時計遺伝子 / 初期浸潤病巣 |
研究実績の概要 |
本研究は、微小環境を考慮した胆道癌初期浸潤病巣の解析を行う事で、早期胆道癌の病態解析に繋げ胆道癌における新たな癌増殖制御機構の構築を目指すものである。 胆道癌の微小環境特性としては、初期浸潤病巣においても癌細胞周囲に線維化が生じ、脈管侵襲や神経周囲浸潤が顕著になることが挙げられる。癌細胞と周囲の間質の相互作用を含む微小環境が癌の悪性度に重要な役割を果たしている。これらの相互作用は概日リズムを形成する時計遺伝子 (bHLH (Basic-helix-loophelix) 型転写因子)を基盤に形成されるという仮説に基づき、時計遺伝子の発現と癌細胞増殖、癌細胞・間質との相互作用の機序を証明することにより、胆道癌初期浸潤病巣における癌微小環境の病態解明と増殖制御機構の構築を目標としている。 時計遺伝子DEC1, DEC2は全身のあらゆる臓器で発現しており、日内リズムや免疫、癌化、低酸素応答、アポトーシス、組織分化の制御など多彩な働きを有していることが知られつつある。これまでに胆道癌細胞とヒト間葉系幹細胞を共培養し、癌細胞の形態変化、免疫組織化学染色の結果において、癌細胞に上皮間葉系転換(EMT) が生じることを明らかにした。更にこの微小環境下において癌細胞のDEC1の発現が上昇することを明らかにした。DEC1が癌微小環境形成において重要な働きを担っていることを示唆する結果を得ている。 平成29年度は、(1)間葉系幹細胞の癌関連線維芽細胞(CAF)への分化誘導を行うと伴に、胆道癌細胞とCAFとの共培養により癌微小環境の形成を行い、(2)癌微小環境が癌幹細胞に及ぼす影響を病理学的・分子生物学的に検討した。前者はヒト間葉系細胞にTGF-β処理等を行いCAFへの誘導を確認し進め、後者は(1)で得られたCAFへの誘導を認めたヒト間葉系幹細胞と胆道癌細胞株を共培養し癌微小環境を再現し検討した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度は、癌関連線維芽細胞の分化と時計遺伝子発現、微小環境制御機構の解明を目指し、(1)間葉系幹細胞の癌関連線維芽細胞(CAF)への分化誘導、(2)CAFが胆道癌細胞に及ぼす影響を検討している。 胆道癌細胞において癌幹細胞マーカー陽性細胞ならび陰性細胞の分離をMACS (Magnetic Cell Sorting) を用いて行っており、時計遺伝子と細胞増殖能・浸潤能の検討を行い包括的に癌微小環境と時計遺伝子との関連を現在解析中である。ある程度の研究成果も認められており、論文投稿の準備中である。 以上より総合的に判断すると「おおむね順調に進展している」といえる。
|
今後の研究の推進方策 |
平成29年度から継続し癌関連線維芽細胞の分化誘導と時計遺伝子の発現、微小環境制御の解明を目指す。具体的には、癌間質線維化に極めて重要であるとされる抗腫瘍・抗サイトカイン (TNF-α, β, γ、IL-1, IL-6) と概日リズム下で発現している時計遺伝子との相互関係を解析する。これらの相互関係解明は、胆道癌における薬物療法への基礎研究につながるのみならず、初期浸潤病巣での抗腫瘍作用を解明するうえでも極めて重要と考えられるからである。
|