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2016 年度 実施状況報告書

大腸におけるmicroRNA機能異常を介した炎症性発癌の病態解明と制御法開発

研究課題

研究課題/領域番号 16K19329
研究機関東京大学

研究代表者

吉川 剛史  東京大学, 医学部附属病院, 特任臨床医 (40631685)

研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2019-03-31
キーワードmicroRNA / 発癌 / 慢性炎症 / 炎症続発性腫瘍
研究実績の概要

遺伝子改変マウスによって、microRNAの働きを生体でモニターできるレポーターマウスを樹立し、このマウスを用いて炎症続発性腫瘍モデルの実験を試み、大腸に慢性的な炎症を起こすことができる化学物質で炎症を引き起こしたところ、炎症を起こしている腸管上皮細胞でのmicroRNAの働きが減弱していることが確認された。このとき、腸上皮内のmicroRNAの発現量は大きくは変化していなかったため、microRNAの働きの減弱は、microRNAの「発現量」よりもむしろ「機能」が低下していることによって起きていることが示唆された。このmicroRNAの機能減弱は、炎症に関わるサイトカイン(TNF-αやIL1などを培養細胞に添加する実験でも確認された。
次に、この原因を探索するため、炎症性刺激の存在するところでmicroRNAの機能に関わる因子の状態を検討したところ、APOBEC3Gというタンパク質の分解が、炎症性刺激によって促進されていることが示された。APOBEC3Gは、microRNAの機能が発揮される際に重要なArgonaute2と呼ばれるタンパク質を中心とした複合体にmicroRNAを導いて機能させるのに重要な因子として働いており、APOBEC3Gが炎症刺激で分解されるためにmicroRNAの機能が減弱することが示唆された。以前、腸管上皮内のmicroRNAの発現を全体的に減らした遺伝子改変マウスモデルで大腸の腫瘍ができやすくなることを報告しており、慢性炎症に伴うmicroRNAの機能低下は、ちょうどmicroRNAの発現を減らした状況と類似の状態をもたらし、それによって腫瘍形成が促進されることが示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

慢性炎症に続発する腫瘍の形成には、炎症持続に伴うmicroRNAの機能低下が背景にあるのではないかという 当初の仮説の検証がおわり、ほぼ仮説通りの結果が得られた。
また、その分子機構の解明まで踏み込み、中心分子としてのAPOBECの同定にまで至った。

今後の研究の推進方策

今後は ここまでの検討結果で、microRNA機能の減弱が発癌に寄与することを見出したので、易発癌性状態の時にmicroRNA機能を増強する、あるいはmicroRNAの発現を増やすことによって発癌抑止につながるかを検討していきたい。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2017

すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 謝辞記載あり 1件)

  • [雑誌論文] Repression of MicroRNA Function Mediates Inflammation-associated Colon Tumorigenesis2017

    • 著者名/発表者名
      Yoshikawa T, Wu J, Otsuka M, Kishikawa T, Suzuki N, Takata A,Ohno , Ishibashi R, Yamagami M, Nakagawa R, Kato N, Miyazawa M, Han J, Koike K
    • 雑誌名

      Gastroenterology

      巻: 152 ページ: 631-643

    • DOI

      10.1053/j.gastro.2016.10.043.

    • 査読あり / 国際共著 / 謝辞記載あり

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公開日: 2018-01-16  

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